2016 Fiscal Year Research-status Report
韓国における結婚移住女性の政治的主体化ートランスナショナルな組織活動を中心に
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15K01922
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
徐 阿貴 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (90447566)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 移民女性 / 政治参加 / 韓国社会 / 組織活動 / 女性連帯 / 多文化政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目にあたる2016年度は、韓国における移住女性の政治参加に関し、ソウル、仁川、春川、済州で現地調査を実施した。トランスナショナルな結婚移住女性組織の活動状況、地域や中央政治との関わり、既存の女性運動や公的機関との関係、政治活動を行うことによる社会関係の変化を中心に、インタビューと参与観察を行いデータを収集した。また韓国フェミニズムによる移住女性へのアプローチに関し、文献調査とインタビューを行った。地域のリーダー的存在である移住女性たちのライフストーリーをもとに、政治的関心を持つプロセス、分野、活動内容、参加における困難と解決手段を探った。居住歴が長くホスト国家の国籍を持ち、言語文化的にもホスト社会への統合度が高い場合、一般に「移民」として受ける不平等な待遇への不満が高まりやすいといえる。韓国における結婚移住女性のケースでは、家庭や地域生活、雇用における被差別体験、多文化家族支援が渡韓まもない結婚移住女性をおもな対象としていることによる政策的疎外、支援現場で生じる韓国女性と移住女性間の序列など、多様な要因が絡み合い政治的エージェンシーを形成している。 成果の公表としては、国際会議(Metropolis 2016)にて、東アジアにおける移住女性の相互扶助および組織活動の現状、ホスト社会から/へのインパクトを比較考察するワークショップを開催した。日本、韓国、台湾の現状について、研究者および移住背景を持つ実践者計4名が報告を行い、研究の深化と相対化、理論と実践の連携、東アジアの地政学および人口構造的特徴との関連づけをすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に整理した移住女性組織にみるトランスナショナリズムと政治的エージェンシーに関し、イギリスの南アジア系女性組織研究(Takhar 2013など)を参照しつつ、分析枠組みの刷新を図った。当初の計画通り、韓国でのフィールドワークと資料収集を集中的に行った。2016年度は、4月総選挙において移民背景を持つ党推薦候補が不在であったこと、大統領弾劾という重大事件を前に運動圏での移住女性の活動は全体的に低調気味ではあったが、首都圏に加え地方でのフィールド調査によりデータを充実させ、研究の進展を図るよう努めた。日本社会学会での発表、Metropolis会議でのワークショップ開催により、研究成果のフィードバックとネットワーク形成を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2017年度は、移住女性の政治参加に関わる多彩な組織活動の調査、ライフストーリーの収集、連携する女性団体や関係機関へのヒヤリング、文献や運動資料の収集を行っていく。政権交代による移住女性政策への影響に目を配りつつ、引き続き首都圏や地方での事例を蓄積し、データの整理と分析を行う。先行研究と突き合わせ考察をし、研究成果のまとめを行う。National Women's Studies Associationでプロポーザルが採用され、報告する予定である。
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