2016 Fiscal Year Research-status Report
日本とフィンランドの家族支援における比較ジェンダー学研究
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15K01923
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Research Institution | Fuji Women's University |
Principal Investigator |
木脇 奈智子 藤女子大学, 人間生活学部, 教授 (00280066)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フィンランド / 子育て / ジェンダー / ネウボラ / 家族支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
科研費2年目にあたる2016-2017年は、10月6日-16日のフィンランド調査を中心とした研究活動を行った。渡航前よりフィンランド国中央部にあるHameelinna市を本拠とするHAMK(Hame Applied University)の教職員とコンタクトをとり、ネウボラで家族支援を行うパブリック・ナース(保健師)養成課程の教育および現場での理念について、3日間のレクチャーを受けた。またHAMK学内の子育て支援においてプログラムを体験した。さらに、市内のネウボラ2か所と保育所2か所(公立及び私立)を訪問しフィールドワークを実施。ネウボラ・ナースに聞き取りを行った。 Helsinki市においては、移民街のフィールドワークを実施し、貧困者に対する食糧配給所を見学。移民の多い保育所に子どもを通わせている日本人女性に話を聞いた。今年度は移民の増加による社会保障費の増加と福祉削減など、Finlandが抱える課題をうかがい知ることができた。帰国後はこれらの調査を、報告論文「フィンランドネウボラの理念と現状」『藤女子大学QOL研究所紀要』Vol.12(2017.3)にまとめた。 また、2015年以降の調査結果の発信を継続して行った。日本家政学会第68回大会「家族支援の比較ジェンダー研究(2)」(於:金城学院大学,2016.5.29)、国際ジェンダー学会2016年大会「フィンランドの子育て支援とジェンダー」(於:一橋大学,2016.9.10)、Spport Policies for Family and Children in Japan and Finland”, Summer Institute Open Seminar(2016,7,28,Hokkaido Univ.)”において成果を報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査および成果の発表はおおむね順調に推移している。大きな要因として、日本及びフィンランドにおける人的ネットワークの構築が順調に進展していることによる。 HAMKでの調査は、日本フィンランドセンター(フィンランド大使館併設)の紹介により実現した。日本におけるApplied Universityの調査はこれまでに確認できておらず、ネウボラの理念を探るに好機に恵まれた。また北海道フィンランド協会のコネクションから、元北大留学生Johanna Korhonenにさん通訳を依頼することができ、そのことが調査の大きな助けとなった。 これらのネットワークは研究の推進力として大きな力であり、今後とも調査地および日本におけるフィンランド・コミュニティとのラポールを大切にしながら研究を進めていきたい。 また学会報告や報告論文などの発信もも予定通りに発信している。2017年度から日本版ネウボラ(子育て世代地域包括支援センター)の設置が地方自治体の努力義務となることから、札幌市、千歳市、北海道子ども虐待防止フォーラムにおいて、フィンランド・ネウボラに関する招聘講演を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2017(平成29)年度は、3年間の調査の最終年として、フィンランドにおけるジェンダーについて、その歴史と人々の規範を調査しまとめたいと考えている。 2015-2016年度は、ネウボラや保育所に焦点を当て、子育ての社会化の理念や制度、そこに携わる人びとの社会的地位や待遇、ケアのあり方について調べてきた。そのなかでフィンランドの人々はジェンダーに平等に関して当然のことと考える傾向にあり、質問をしてもとくに深まることがないが現状であった。しかしながら、本研究は日本における子育てのジェンダーバイアスをいかに突破するかを目的にフィンランドとの比較調査を試みるものであり、最終年は男女平等局やジェンダー研究者への聞き取りを通して、理論化の手がかりとしたい。 さらにスウェーデンの家族及び保育所を訪ね、さらなる比較を試みたい。調査終了後はこれまでに刊行したものを含めた報告書を印刷し、3年間のまとめと今後の課題を明らかにする。
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Causes of Carryover |
2016年度は、連携研究者(田園調布大学・太田由加里・教授)が所属大学において半年間のサバティカルを取得し、そのため所属大学から旅費交通費その他の研究費を得ることができた。よって、本補助事業から支出を計画していた予算の執行がその分少なくて済んだことが一点である。 二点目の理由は購入を予定していた物品(携帯用PC)のモデルチェンジがあったために購入の機会を逸したことにある。物品の予算を計画通り執行できていないことが反省点であり、必要な物品を急ぎ整えたいと考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2018年度は本補助事業の最終年であり、先々を読んで計画的に予算を執行すると同時に、物品購入以外にも、旅費交通費、通訳費、報告書作成費などに余裕を持って必要経費の支出を計画し執行したい。 また2017年度同様に日本国内でのフィンランド研究者を招聘して研究会を開催したい。これらの予算執についての計画と執行を早め早めに行うこととする。
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