2015 Fiscal Year Research-status Report
近代日本の手作りとジェンダー -大量生産の時代における趣味のジェンダー化-
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15K01927
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
神野 由紀 関東学院大学, 人間共生学部, 教授 (80350560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 泉 中央大学, 文学部, 教授 (00368846)
山崎 明子 奈良女子大学, その他部局等, 准教授 (30571070)
溝尻 真也 目白大学, 社会学部, 講師 (50584215)
中川 麻子 大妻女子大学, 家政学部, 准教授 (60468329)
飯田 豊 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (90461285)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ジェンダー / 手作り / 手芸 / 模型製作 / 趣味 / デザイン / ナショナリズム / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は研究例会を2回開催した。2015年9月15日(火)関東学院大学関内メディアセンターにて、「戦後日本における男性ものづくり文化の社会史-『少年工作』から日曜大工」へ」(溝尻信也:研究分担者)、2016年3月13日(日)奈良女子大学にて「アメリカの裁縫 / 刺繍文化と女性」(平芳裕子:外部講演者)、「テレビが見世物だったころ ―初期テレビジョンの考古学」(飯田豊:研究分担者)の発表を行い、知見を深めた。また2016年2月4日~5日には、兵庫県立歴史博物館の入江コレクションについて、A班・B班合同調査を実施、戦前戦後の玩具の中からその後の手作り趣味のジェンダー化につながる玩具を多数確認した。 A班は女性における「手作り」の文化について、今年度は各自での研究が主となった。神野は1970年代の手芸ブームの担い手が幼少期に接した玩具の調査を兵庫県立歴史博物館及び国立民族学博物館、田中本家博物館にて行った。中川は手芸を趣味とする女子学生(小学生2名、高校生5名)に対して、手芸に関する質問紙とインタビュー(各30分)を実施した。山崎は研究調査対象となる雑誌『ジュニアそれいゆ』の予備的調査、及び戦後の素人の手芸作品の調査を行った。 B班は、男性における「手作り」の文化について、戦前のナショナリスティックな段階、敗戦による大きな転換点に注目し、特にこの時期に創刊され今日も継続して刊行されている科学雑誌『子供の科学』(誠文堂新光社)を取り上げ、当該の時期発行のバックナンバーに関する悉皆調査に向けての準備作業を行った。あわせて、鉄道趣味やオーディオなどの手作り文化についてのサークル向けのインタビュー調査に関する項目の検討などを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が始まる際に年2回の研究例会を予定していたが、すべて予定通り実施された。また研究会には、外部の研究者の講演も加えて知見を深めていくことが当初から検討されていたが、これについても2016年3月より始まっている。また、「研究実績の概要」に記したように、当初の計画以外にも、博物館調査などの研究が活発に進められた。 A班は、神野が当初予定していた『美しい部屋』『私の手作り』の調査を完了、さらに追加の雑誌として『ハンディクラフト』の調査、手芸ブーム世代のインタビュー調査を行い、1970年代の手芸ブーム世代の幼少期、影響を与えたと思われる玩具、遊びについての調査も並行して実施した。中川は予定通り手芸を趣味とする女子学生へのインタビューを実施し、女子学生が手芸を趣味とするきっかけは、家庭内の母親または祖母の影響が強く、特に家庭で簡単に教授を受けることができ、また道具が揃っているなど手芸を始めやすい環境であるかが重要であることが明らかになった。 B班の歴史的な変遷に関する分析については、1924(大正13)年に創刊され、今日でも刊行が続いている、科学雑誌『子供の科学』(誠文堂新光社)を中心的な対象とし、創刊期から1950年代までにおいて、手に入りうる限りのバックナンバーについて、先行して表紙と目次ページを収集し、全体的な理解を深めた。 現状における特徴的な事例調査については、鉄道趣味やオーディオ制作などを対象に、いくつかのサークル・団体を選定するとともに、実際のインタビュー調査の実施に向けた項目の検討など、準備作業を行った。 さらに両方に関連して、文献資料の検討を行い理論的な検討を深めた。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度の研究を進めていく中で、いくつかの課題とその解決策が明らかになった。まず、A班・B班全体を通底する研究意識の明確化のために、全員が共有できる基礎資料を設定する必要があることがわかった。具体的には『ジュニアそれいゆ』と『子供の科学』を対象雑誌とし、創刊からすべての号のデータベース化を進めることになった。次に、こうした雑誌だけでなく、博物館調査、アンケート調査なども含めたデータの共有化をどう図るか、という検討を行った。現在試行段階ではあるが、クラウドサービスによるデータ閲覧という方法を試みている。この基本資料を、各自がどのように活用するかということも含めて、多少の研究テーマの見直しも予定されている。 今後の研究の方向としては、研究計画当初よりも歴史的検証を詳細に行う必要性があるという認識が強まった。歴史的な分析から明らかになることが想定されるのは、大正末~昭和初期にかけての、消費文化の萌芽が見られ比較的リベラルであった状況から、戦中におけるナショナリズムが強まっていく段階に向かって、男女のジェンダー差が色濃くなっていくことである。そのプロセスを、男性/女性それぞれの「手作り」文化に着目して、微細なタイムラグなどにも注意を払いながら、今後の研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
各々が進めているインタビュー調査において、一部インフォーマントとの日程調整が年度内にできず、2016年度に実施されるものがあったため、テープ起こし、現地までの旅費などの予算消化ができなかった。 雑誌調査は所蔵図書館への協力依頼に予想以上に時間がかかり、すべての複写が完成できず、残金が発生した。また雑誌古書の購入が2016年4月にずれ込み、年度内の予算消化ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の内容については、すべて2016年度に完了する予定である。
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Research Products
(8 results)