2016 Fiscal Year Research-status Report
「マタニティ・ハラスメント」の原因と被害者のキャリア形成への影響
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15K01931
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
川口 章 同志社大学, 政策学部, 教授 (50257903)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 女らしさ / セクハラ / 女性活躍推進 / ワークライフバランス |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目に実施したWeb調査「在職中の妊娠・出産に関する調査2016」で得られたデータを分析し、関西学院大学で行われた国際コンファレンスと、同志社大学およびスタバンゲル大学(ノルウェー)で行われたセミナーで報告した。分析は、どのような女性がマタハラ被害に遭いやすいか、どのような職場でマタハラが発生しやすいかに焦点を当てた。 マタハラの研究は、海外でもほとんど存在しないため、セクハラの研究を参考に、仮説を立て、検証した。仮説は以下の4つである。1)伝統的な「女らしさ」から乖離している女性ほど、マタハラ的行為に遭いやすい。2)職場への貢献度が低い女性ほど、マタハラ的行為に遭いやすい。3)マタハラ的行為に遭った場合、伝統的な「女らしさ」から乖離している女性ほど、それをマタハラ被害と認識しやすい。4)マタハラ的行為に遭った場合、職場への貢献度が高い女性ほど、それをマタハラ被害と認識しやすい。ここで、「職場への貢献度が高い女性」とは、人的資本の水準が高い女性、および、女性が活躍しやすい職場で働いている女性を意味する。分析の結果、概ね4つの仮説が支持された。 また、女性活躍の先進国として知られているノルウェーの企業を訪問し、管理職1名、10歳未満の子供がいる一般労働者7名に聞き取り調査を行った。ノルウェーでは出産後も女性が働くのが当然とされており、男性も3か月程度の育児休業を取得するのが一般的である。聴き取り調査を行った労働者には、マタハラの被害者はいなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究が当初の計画より遅れている理由は以下の通りである。平成28年度(2016年度)は学部長に任命されたため、研究計画を作成した時期に予想した以上に学内業務が多くなった。そのため、研究時間を削らざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、Web調査で得られたデータを用い、どのような女性がマタハラ被害に遭いやすいか、どのような職場でマタハラが発生しやすいかを分析する。さらに、研究範囲を、マタハラが被害者のキャリアや幸福度に及ぼした影響にまで範囲を広げ分析する。研究結果は、セミナー、学会、コンファレンスなどで発表し、専門誌に投稿する。 さらに、子供のいる労働者に聞き取り調査を行い、マタハラ被害に遭いやすい女性の特徴、マタハラが発生しやすい職場の特徴、マタハラが被害者のキャリアや幸福度に及ぼす影響など、アンケート調査で分析した点について、より詳細に分析する。 また、当初の研究計画にある通り、2回目のアンケート調査を行う。この調査では、1回目のアンケート調査で尋ねなかった質問(妊娠以前の生活満足度や性別役割分担についての態度)を加えると同時に、有用性の低い質問を省く。 【現在までの進捗状況】で述べたように、昨年度は当初予定したほど研究時間が取れなかったため、研究が予定通り進んでいない。また、今年度も同じ状態が続くため、必要があれば、研究期間を1年間延長する。
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Causes of Carryover |
1年目に実施したWeb調査の費用が予想より大幅に低かったため、次年度使用額が発生した。200万円程度の調査を予定していたが、相見積もりの際、一業者が大幅に割り引いてくれたため、120万円で収まった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画では、最終年度に100万円程度の費用をかけて2回目のWeb調査をする予定であったが、その調査をより充実させ、170万円程度を支出する。
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