2017 Fiscal Year Annual Research Report
"New Fathers"- the Construction of New Masculinities in Germany
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15K01932
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
石井 香江 同志社大学, グローバル地域文化学部, 准教授 (70457901)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 「新しい父親」 / 市民的自助組織 / 男性運動 / 男性の権利運動 / 男性性 / 労働環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
西ドイツでは1977年の家族法改正の議論の中で生まれた「扶養義務者連合」(1975年設立)を皮切りとして、1980~ 90年代初めにかけて「子どものために決起する父親たち」(1988年)他の父親たちの市民的自助組織が多数設立された。いずれも父親の法的・社会的立場を改善する趣旨で立ち上げられた組織であるが、女性との関係性の根本的な見直しを図るラディカル派から、仕事と父親業の両立を目指す穏健派まで、組織内部の政治的志向は実に様々である。ドイツ人社会学者A. ヴォルデによれば、組織のメンバーは30~50歳の大卒市民層が多くを占めていたことが判明しており、これは「男性運動」の担い手とも重なる。 現在、1970年代以降に西ドイツで組織された父親イニシアティヴの中でも、千人近い会員数をほこる規模で、組織の構造や活動内容が他の組織と比べ典型的と思われる「子どものために決起する父親たち」(現在も約50の支部がドイツ全土で活動を継続)の設立の経緯や活動に注目し、1994年に発刊された同イニシアティヴの機関誌『父親のための雑誌』(PAPS)の言説分析を行いつつ、その活動に軌跡を追った。この組織では定期的に開催される会合、機関誌やウェブ上で男性の抱える問題(恋人・妻との関係、離婚、親権、育児に関わる問題など)が議論され、その知見を踏まえ政治的にも積極的にロビー活動も行っている。2017年の夏にPAPSの検討を集中的に行った結果、父親たちが稼得労働以外に育児・家事に関与して「男性性」の意味を変化させる過程は、離婚後の親権問題と並び長時間労働など労働環境の見直しと不可分であることが分かった。今後は本研究を発展的に継承し、グローバル化の進展する1990年代以降に当組織と統一サービス産業労組の連携などの活動に着目し、労働環境を見直す具体的な経緯を明らかにし、この動きの今日的意義について考察していきたい。
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