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2016 Fiscal Year Research-status Report

リベラリズム的主体に対するフェミニズムの葛藤と挑戦-マリアンネ・ヴェーバーを軸に

Research Project

Project/Area Number 15K01933
Research InstitutionDoshisha University

Principal Investigator

内藤 葉子  同志社大学, アメリカ研究所, 嘱託研究員 (70440998)

Project Period (FY) 2015-04-01 – 2018-03-31
Keywordsマリアンネ・ヴェーバー / ドイツ女性運動 / ジェンダー / 第一波フェミニズム / ドイツ・リベラリズム / マックス・ヴェーバー
Outline of Annual Research Achievements

2016年度は、2015年度に収集した資料を中心に読解を進め、研究計画書に記載したとおり、マリアンネ・ヴェーバーの結婚観・家族観・女性観について、ドイツ第二帝政期の資料を中心に分析を進めた。
具体的には、市民女性運動の急進派に位置づけられる人々によって唱えられた「新しい倫理」と批判的に対峙することで、彼女が結婚や性的共同体、女性のセクシュアリティや性愛等をめぐって、倫理と法と自然の関係をどのように捉えていたかを考察した。それを通じて、自然科学的知の合理化がジェンダーに関する知をあらたに形成する時期に、彼女が自然概念と対峙する形で倫理的主体としての女性の在り方を構想したことを明らかにした。またこの背景には、彼女がマックス・ヴェーバーやH・リッカートらと共通する科学的態度を有していたことを確認した。この成果を5月に日本法社会学会にて報告し、加筆修正のうえ政治思想学会誌に論文として公表した。
さらに、1904年8月下旬から11月にかけて夫マックス・ヴェーバーと共にしたアメリカ旅行に注目し、彼女の関心がセツルメント運動を支えたアメリカ中産層女性の活動、アメリカの女性労働者と中産層女性との交流関係、女子大教育や共学教育の是非、ドイツ系移民の状況、アメリカ人女性の家事労働や社会的・政治的地位等に向けられたことを明らかにした。この研究により、彼女のフェミニズム思想が哲学的・法学的領域からのみならず、実践的・経験的に形成されたものでもあることが明らかとなった。また第一波フェミニズムの国際的交流関係の一様相を描き出すことにも寄与した。この実績に関しては、9月14日に同志社大学アメリカ研究所部門研究会にて報告・意見交換・討論を行い、同研究所紀要に論文を投稿し掲載された。
また、本研究課題であるマリアンネ・ヴェーバー研究にとって重要な関連をもつマックス・ヴェーバーについての論文も執筆・公表した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2016年度は、研究計画に従い、2015年度に収集した資料・文献の読解を進め、学会報告と論文執筆に努めた。また、2017年度の政治思想学会で報告するためのエントリーを行い、報告が確定した。以上の研究実績は2016年度の研究計画におおむね沿ったものとなっており、ほぼ予定どおり作業を進めているため、当該区分を選択した。
ただし、研究を進めるにつれ、検討課題がドイツ第二帝政期に限っても豊富にあることが判明しており、ワイマール期、ナチス期まで資料の読解が追い付いていない。だがこれらの時期における彼女の思想を検討するためにも、第二帝政期の彼女の思想形成を丹念に追究することは重要であると考えられる。

Strategy for Future Research Activity

本研究課題の今後の推進方策については、2015年度に収集した資料読解を継続するとともに、必要な資料の追加的収集も随時行いながら、下記に述べる研究成果につなげる予定である。
まず、2017年5月28日に政治思想学会にて報告を行うことが確定している。この報告は、マリアンネ・ヴェーバーによる倫理的主体としての女性の形成を、ドイツ・リベラリズムとドイツ女性運動が交差する点に注目して追究しようとするものである。とくにカントやフィヒテなどドイツ観念論哲学と、マックス・ヴェーバーやゲオルク・ジンメルら同時代のリベラルな知識人との影響関係を中心に検討する。これは2017年度研究計画の内容に沿ったテーマとなるはずである。さらにこの報告内容については、『アジア・ジェンダー文化学研究』(奈良女子大学アジア・ジェンダー文化学研究センター)第2号に投稿する準備に入る。また、マリアンネ・ヴェーバーにおけるフェミニズム思想とリベラリズムの関係を引き続き検討するために、2017年度ジェンダー史学会の自由論題報告にエントリーする。採用された場合には12月に報告を行い、同学会誌への投稿を試みる予定である。
以上の作業を遂行しながら、ワイマール期、ナチス期の彼女の思想に関する一次資料・先行研究の洗い出しも継続的に行い、不足分の資料とその収集先を確定し、国内での可能な限りでの資料収集を遂行する。2017年度は第二帝政期のマリアンネ・ヴェーバーの思想について研究課題を総括することになるが、それはワイマール期、ナチス期の彼女の思想を追跡するための基盤ともなるはずである。

Causes of Carryover

出張費として計上していた学会・研究会・シンポジウムが近郊の諸大学で開催されたため、予算執行を申請しなかったこと、他の業務との兼ね合いで2日間の出張として計上していた学会が日帰りとなったこと、また他の業務との兼ね合いで研究会・シンポジウムへの参加自体をとりやめたことが、当該助成金が生じた主な理由である。

Expenditure Plan for Carryover Budget

学会・研究会・シンポジウム参加のための出張費として使用する他、当該研究遂行に必要な書籍の購入および資料収集のために用いる予定である。

  • Research Products

    (3 results)

All 2017 2016

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results,  Open Access: 1 results,  Acknowledgement Compliant: 2 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 「マリアンネ・ヴェーバーとアメリカ――セツルメントと社会化への関心」2017

    • Author(s)
      内藤葉子
    • Journal Title

      『同志社アメリカ研究』

      Volume: 53 Pages: 125頁-146頁

    • Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
  • [Journal Article] 「マリアンネ・ヴェーバーにおける「新しい倫理」批判と倫理的主体の構築――性をめぐる倫理/法/自然の関係」2017

    • Author(s)
      内藤葉子
    • Journal Title

      『政治思想研究』

      Volume: 17 Pages: 171頁-202頁

    • Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
  • [Book] 『マックス・ヴェーバー研究の現在――資本主義・民主主義・福祉国家の変容の中で――』2016

    • Author(s)
      中野敏男・宇都宮京子・小林純・水林彪・深井智朗・鈴木宗徳・内藤葉子・藤田菜々子・市野川容孝・樋口陽一・三苫利幸・荒川敏彦・折原浩・W・シュベントカー・恒木健太郎・野口雅弘・野崎敏郎
    • Total Pages
      417頁(119頁-131頁)
    • Publisher
      創文社

URL: 

Published: 2018-01-16  

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