2017 Fiscal Year Annual Research Report
The feminist Conflict and Challenge against the Liberal Subject in Marianne Weber
Project/Area Number |
15K01933
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
内藤 葉子 同志社大学, アメリカ研究所, 嘱託研究員 (70440998)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マリアンネ・ヴェーバー / ドイツ女性運動 / リベラリズム / カント / フィヒテ / ジンメル / マックス・ヴェーバー / 主体 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、補助事業期間全体を通じての研究目的としていたリベラリズムとフェミニズムの関係について、マリアンネ・ヴェーバーの思想から考察し一定の成果を出した。具体的には最終年度の研究計画に沿って、第二帝政期ドイツにおいて彼女が倫理的・政治的主体としての女性像をどのように構想したのかを、カント、フィヒテ、マックス・ヴェーバー、ジンメルの思想と女性運動が交差する点に追究した。本研究の意義は、第一に、彼女がアメリカのセツルメント運動に関心を寄せドイツ女性運動に関与したことの背景に、ドイツ観念論の義務論的自由論にもとづく近代的主体像の受容があったこと、またそれに基づいて女性の主体性を構想したことを指摘した点である。第二に、カント哲学における身体性の契機の欠如と、そこからくる理性と身体のディレンマを、人間の関係性を重視するフィヒテ哲学を媒介しながら女性運動という実践によって克服しようとしたと指摘した点である。この研究の重要性は、女性の主体性に関する思想を思想史・社会史・運動史の重なる地点で考察したことである。この成果を5月に政治思想学会で報告し、奈良女子大学の雑誌に公表した。 さらにこの研究成果から、彼女がドイツ観念論に依拠して女性的主体を構想した理由を、当時の思想潮流との対抗関係から考察した。彼女は19世紀を通じた3つの思想潮流である①歴史主義、②人類学・生理学・生物学などの自然科学、③史的唯物論に共通する「自然」概念に、女性の主体化を阻害する要因を捉えた。彼女の思想がこれらの思想潮流と対峙するなかで形成されたことを12月のジェンダー史学会において報告した。 また18年3月29日に開催された同志社大学アメリカ研究所部門研究会にて、拙稿「マリアンネ・ヴェーバーとアメリカ」(『同志社アメリカ研究』第53号、2017年)に対する矢野久美子フェリス女学院教授からの論評を受け討論を行った。
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