2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K01934
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
村瀬 敬子 佛教大学, 社会学部, 准教授 (20312134)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 郷土料理 / 郷土食 / 家庭料理 / 婦人雑誌 / ジェンダー化 / 伝統 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は郷土料理/郷土食のメディア表象の変遷について、書籍、新聞、婦人雑誌を中心に資料の収集・分析を進めた。特に婦人雑誌については、その成果を論文にまとめ日本マス・コミュニケーション学会の学会誌に投稿し掲載された(村瀬敬子「郷土料理/郷土食のジェンダー化─婦人雑誌における食関連情報を中心に」『マス・コミュニケーション研究』第89号、pp.103-120、日本マス・コミュニケーション学会、2016年)。 この論文は、郷土料理/郷土食が、それを采配する役割を女性(母,妻,主婦)が担うとする「家庭料理」のジェンダー規範と、いつ、どのように、かかわるようになったのかを明らかにしている。 これまで、郷土料理/郷土食を歴史的・社会的に構築されたものだとする研究では,1940年代の代用食としての「郷土食」への注目を嚆矢とし,高度成長期にジェンダー化したという見解が定説とされてきた。しかし本研究では、婦人雑誌というメディアにおいて、郷土料理/郷土食は1920年代から30年代にすでに発見され、「家庭料理」のバリエーションのひとつに位置づけられることで、ジェンダー化していたことを指摘している。主に研究対象としたメディアはこの時期に多くの読者を持っていた婦人雑誌『主婦之友』と『婦人倶楽部』であり、そこでの読者投稿と郷土料理/郷土食との関係についても分析した。こうした内容をこれまでの「郷土」の構築にかかわる研究のなかに位置づけ、婦人雑誌メディアにおける郷土料理/郷土食がどのような意味を持つものだったかを考察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、平成27年度に行った1920年代から1945年までの郷土料理/郷土食のメディア表象と国家政策の調査の内容をまとめ、論文として投稿した。また1945年から高度成長期を対象として、郷土料理/郷土食のメディア表象の資料収集と分析を進めたが、収集した資料すべての分析は終わっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、引き続き平成28年度に収集した資料の分析を進める。また平成29年度にイギリスのロンドン大学で在外研究を行うこととなったため、この機会を生かし本研究にかかわる新しい理論を取り入れるとともに、国際比較の視点も導入しながら研究を進める。また在外研究での成果を取り入れたうえで成果を出すため、研究時期を1年延長して、平成30年度に研究全体のまとめを行おうと考えている。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、研究計画で予定していた出張による文献収集が、図書館間の文献取り寄せ等で代替できたこと、論文執筆等により平成28年度の分析が予定通り進まなかったことなどによって予定額の一部が未使用になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、平成28年度にできなかった資料の分析を行うとともに、本研究にかかわる海外での研究理論等をさぐり、国際比較の視点の導入を試みる。このことによって本研究と最新理論を結び付け、研究内容をより深められると考えている。
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