2016 Fiscal Year Research-status Report
島嶼地域の世界自然遺産登録の経験と遺産概念の再考-人文社会系世界遺産モデル-
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15K01949
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
萩野 誠 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (90208413)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑原 季雄 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (00225319)
西村 知 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (20253388)
市川 英孝 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (70526988)
柴田 健志 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (80347088) [Withdrawn]
馬場 武 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 講師 (60735372)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 世界自然遺産 / 観光資源 / 観光サービス / エコツアー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究は、研究フィールドをこれから世界自然遺産に登録されようとしている地域に移し、平成27年度の結果と比較研究した。具体的な研究調査対象地は、世界遺産暫定リストに登録されている「奄美・琉球」地域である。 今回のフィールドの調査分析でわかったことは、すでにこの2つの地域では、観光産業・エコツアーが存在していることであった。屋久島の場合、観光産業が成立するのは、世界遺産登録後であり、屋久島は特殊なケースであることが把握された。これにより、自然科学的な世界遺産としての評価が必ずしも観光サービスの対象となっていないことも明らかになった。つまり、屋久島の場合、もっとも評価されたのは、亜熱帯から亜寒帯までの植生の垂直分布であるが、観光としては、縄文杉に特化したサービスを提供している。「奄美・琉球」の場合は、すでに観光産業が成立しているため、既存の観光サービス以外の観光サービスの開発をおこない、自然科学的な評価すべてを観光へつなげようとしている。 これによって、日本の世界自然遺産は、第一に、自然科学的な評価をほぼすべてにわたり観光の対象としている「小笠原」、第二に、観光客が対象を限定した「知床」、第三に、科学的な評価の一部だけを観光業として提供する「屋久島」「知床」という区分ができる。 これをもとにして、世界自然遺産の観光モデルを作成し、本年度3月17日(金)沖縄県立博物館美術館での研究成果の現地報告会で発表をした。報告会は一般市民にも開放したが、琉球大学国際沖縄研究所、日本森林技術協会からの参加者によって、モデルの精緻化に関する貴重なご意見をいただいた。従来、世界自然遺産を議論するときには、観光資源の属性ばかりにとらわれており、観光サービスの対象として自然をみることが少なかったように思われる。本年度は、この点を踏まえたモデルのフレーム作成がなされたことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
モデル分析においてはフレームづくりにとどまっている。 平成28年度、社会的に応用可能性が高いモデルが「小笠原」ということが今回の調査研究でわかってきたため、小笠原のデータをもとにして、モデルを作成することが3月に確認された。したがって、観光波及効果をもとめられるモデルにまで至っていない。 このような事態を評価して、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度世界自然遺産既登録地域、平成29年度世界遺産登録予定地域と分析をすすめてきた。平成28年度時点では、平成30年度の調査研究地は、韓国西海岸の多島海としていたが、「奄美・琉球」と同じ登録予定地であるため、フィールドを変更することになった。平成29年度は、台湾を対象とする。 台湾は、世界自然遺産の基準に十分達する自然をもっているが、政治的な要因で登録が不可能な地域である。本研究では、世界遺産条約からはじまり、自然という観光資源を限定利用する観光産業をモデル化してきたが、成果報告会や研究メンバーとの議論のなかで、世界自然遺産のネームバリューについても考えなければならないという共通認識が生まれてきた。この点、台湾は世界自然遺産の登録されなくとも、自然公園としての観光が成立している。これを比較分析すると、「世界自然遺産」という名称の価値がわかってくるのではないかと考えて、台湾の調査研究をおこなうこととなった。台湾の季節、現地観光産業の閑散期を考えれば、12月の調査を予定している。 また、現地報告会として、台湾の調査結果をただちに台北で報告する予定である。 なお、8月には、国内の分析結果を冊子として出版予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度の小笠原調査の必要性がなくなり、平成29年度台湾の調査をおこなうことになったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
12月中旬に台湾調査を行う予定である。一人あたり20万円程度を見込んでいる。これには、現地ガイド等の雇用も含まれている。
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