2016 Fiscal Year Research-status Report
歴史的町並みにおける外国人観光客・住民間交流と地域理解促進の関係の類型化
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15K01952
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
直井 岳人 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (10341075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
十代田 朗 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (70226710)
飯島 祥二 琉球大学, 観光産業科学部, 教授 (80258201)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 歴史的町並み / 商業空間 / 外国人観光客 / 地域理解 / 住民 / 商業従事者 / 感情労働 |
Outline of Annual Research Achievements |
首都圏から離れた高山市でのモニターツアー参加者の確保が困難であったため、同じく商業化され商店街組合も存在する川越市の古い町並みに対象地を変更して7月上旬に外国人大学生4名を参加者とし、訪問地への関心を深める交流経験を記録するモニターツアーを実施した。しかし、文化的差異と、間口の狭い歴史的建築物が卓越することから、参加者が商業事業者と交流したり、彼らの活動に目を向けることが困難であることがわかった。そこで、まずは、より商業事業者の活動が卓越し、その生活文化の独自性が強く感じられるであろう商店街において、比較の意味で、日本人も対象としたモニターツアーを行うこととした。また、日本人住民から見た外国人観光客の存在の意味を明らかにするための平成27年度の研究の延長として、商業従事者に焦点を当て、彼らの外国人観光客に対する商業従事者としての態度を明らかにする研究を行うこととした。その為、那覇市国際通り周辺商店街の、知覚される店舗のサービススケープ、店舗の印象および欲求充足の関係について、東京の大学生、県内観光業従事者、外国人を対象とした現地印象評定調査を実施した(次年度継続予定)。暫定的な結果だが、店員の近づきやすさは、活動性、地元感という印象を通して購買欲求と地域堪能欲求の両方の充足に寄与すること、装飾的な内観や観光者向けの商品は、活動性という印象に繋がると購買欲求と地域堪能欲求を満たす反面、非日常的観光性という印象に繋がると購買欲求を損ねる可能性が共通して示唆された。また商店街の接客従事者を対象に、外国人観光者と日本人観光者に対する感情労働の関係に関する質問票調査を実施し、観光者の国籍に関わらず、異文化受容が、顧客志向、表層感情労働と深層感情労働という意識を経て、職務満足感に正の影響を与えることが示唆された。モニターツアーと質問票調査の結果は海外の観光学術研究大会に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究実績の概要に示した通り、「観光者から見て人の活動が卓越しない環境」において「訪問地との文化差異があるであろう外国人」に地元住民との接触を想起させることが難しいこと、平成27年度からの問題意識として、外国人と住民との交流の意味を理解するには住民側の外国人観光者への意識を分析する必要があると考えられることから、「比較の意味で外国人に限らない対象を含め」、より人の活動が目立つ商業空間でも調査を行い、住民の意識の分析も行ったこと、また、当初予定していた協力団体を窓口とした被験者の確保が難しく、全体計画に遅れが生じている。ただ、「今後の研究方針」に示す通り、被験者募集の新たな方法が見つかり、また、完結はしていないものの、平成28年度中に商業空間におけるモニターツアーは開始しており、暫定的な分析結果からも、地域堪能を促進する店舗の特性に関する、学会投稿に耐える、ある程度まとまった傾向が期待できることが確認されたことから、モニターツアーの枠組みは固まったと考えられる。「今後の研究方針」で述べる通り、引き続き商業空間でモニターツアーを行うと同時に、その枠組みを基にしたより歴史性の強い空間での調査を予定しており、進捗の加速と、当初の計画よりも多面的な角度からの研究成果が得られると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、外国人に限らない対象を含め、より人の活動が目立つ商業空間でも調査を行う方向性で那覇の商業空間での調査を継続するとともに、より歴史性の強い商業空間でも外国人を対象とした調査も再開する。また、沖縄に関しては共同研究者の所属大学、関東圏に関しては研究代表者の所属大学の留学生受け入れに関わる部署を通した留学生被験者の募集のめどが立ち、沖縄に関してはすでに募集を始めている。なお、歴史性の強い商業空間に関しては、研究の進捗、被験者の参加の容易さに鑑みて川越のような首都圏の歴史的町並みへ、あるいは更に外国人にとっての評定の容易さに鑑みて、浅草寺周辺地区などの、建築物の歴史性は薄いが歴史的な観光資源周辺の商業地区に対象を変更する可能性がある。また、場面(店舗)の特性、店舗の印象に、個人特性や文脈などを独立変数に加えた、購買欲求と地域堪能欲求(関心)に影響を与える要因を明らかにするための質問票調査を行う予定である。次年度からは研究計画が固まりつつあることもあり、共同研究者との共同活動を増やす予定である。
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Causes of Carryover |
研究実績の概要に示した通り、「比較の意味で外国人に限らない対象を含め」、「より人の活動が目立つ商業空間でも調査を行い」、「住民の意識の分析も行う」という調査内容の変更を行ったことと、当初予定していた窓口を通した被験者確保に手間取ったため、予定人数の被験者を年度内に召集できず、また、共同研究者とその関係者の共同活動を行わなかったため、謝金と旅費を中心に差額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた使用額は、平成29年度に実施予定の那覇の商業空間での調査と、歴史性の強い首都圏の商業空間での調査のための参加者、調査員への謝金と調査員の交通費に充てる。
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Research Products
(2 results)