2015 Fiscal Year Research-status Report
観光の持続可能性と日本型指標システムの確立を目指して
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15K01972
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
二神 真美 名城大学, 新学部開設準備室, 教授 (70209138)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
アーナンダ クマーラ 名城大学, 経営学部, 教授 (00271396)
宮川 泰夫 皇學館大学, その他部局等, 名誉教授 (20024052)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 観光の持続可能性 / 持続可能な観光指標(STI) / 日本型指標システム / サステイナブルツーリズム / 観光地マネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究では、観光の持続可能性及び持続可能な観光指標(STI: Sustainable Tourism Indicators)研究の基盤を構築する観点から、当初掲げた3つの目標及び実施計画に基づき研究を遂行し、データベースの構築、論文発表、学会発表、ならびに外部専門家を交えた意見交換会の開催等を行った。 第1の目標であった既存資料収集・整理については、STI開発及び適用の研究が先行する海外の関連文献・資料を中心に、2016年3月末の時点で総数70余の出版物及びフルテキストを収集し、文献管理支援ソフトEndNoteを用いて整理した。その中で特にSTI開発及び適用の具体的な事例に基づく実証研究の結果が提示されている論文・報告書等については内容分析を行い、開発主体や各指標システム・STIモデルの特長と問題点とが比較できる基礎資料をエクセルデータ形式で作成した。 第2の目標であった資料分析に基づく指標の再検討については、日本型指標システムを作成するうえで参考になる海外の先進事例の選別を行った。研究計画書で定めた5つの選別基準(観光地類型、世界的認識度、継続性、情報公開・更新度、STI開発プロセス可視化度合)に基づき20の事例を取り上げ、その内容を精査した。その中から最終的に10の事例を今後の詳細な分析の対象地域とし、各事例が提示するSTI手法の比較分析データを作成した。 第3の目標であった海外を中心とした先進事例の実態調査については、研究責任者はSTI先進地域である欧州においてSTI開発担当者(英国代表)にヒアリング調査を行った。さらに研究分担者1はアジア(スリランカ)にて招聘講演を行うとともに現地の研究者との共同研究・調査を行った。研究分担者2は国内(九州・中部・東北)の都市・産業・観光の持続可能性をテーマに現地調査を行い、その成果を国際学会(米国)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、国内ではこれまで研究基盤が確立していない持続可能な観光指標(STI)研究に関して、まず海外における豊富な先行研究を体系的に整理し、具体的な観光地でのSTI適用状況と課題の把握に主眼を置いて研究を進めた。本研究の最初の3段階について、概ね計画通りに研究メンバー3名が役割分担をしながら研究を遂行することができたと考えている。 まず先行研究のレビュー段階では、STI開発及び地域適用が開始された1990年代初頭から現在に至るまでのSTIに関する主要な研究論文及び報告書・著書は全て収集し、既存の文献管理ソフトを使って体系的に整理した上で、研究内容を時系列的に分析することができたことが挙げられる。その結果、空間的・政治的要素を考慮した上でSTIの最適モデル及び具体的研究対象を選別する必要があることが明確にり、次年度以降の地域適用の研究基盤が構築できた。 次にSTIの開発及び適用の先行事例を抽出する段階では、STI開発の時系列分析から2010年代初頭に構築された観光の持続性に関するグローバル基準(GSTC)と、欧州連合が主体的に開発したヨーロッパ型STIシステムとが重要な研究課題であることが明確になった。 国内外の実態調査についても、海外調査においてはSTI開発及び地域適用が最も進んでいる欧州を対象とし、ヨーロッパ型持続可能な観光指標システム(ETIS)の開発に中心的に携わった3人の専門家からヒアリングを行うことができた。また、世界最大の観光市場へと成長してきているアジアにおいては、スリランカの文化遺産と持続可能な観光との関係についての実態調査を行うことができた。他方、日本型観光指標システムの構築において重要となる日本の観光地における地域側の反応や課題についての調査も、観光が重要な基幹産業の1つとなっている九州及び東北地方において実態調査を遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進においては、これまで実施した先行研究レビュー及び先行地域の実態調査の成果を踏まえ、今後1年間をかけて、まず本研究の第4段階である「日本型指標システムの特性の明確化」に向けて、研究対象とする世界的な事例の分析を通して共通の枠組みと基準・指標を明らかにする。特にヨーロッパ型STIシステムが導入された欧州地域において、観光地レベルでのST指標を用いた観光地マネジメントの実態調査を引き続き行っていく。同時に、成長著しいアジアの動向も把握するため、研究分担者1が対象地域とするスリランカを中心としたST研究も推進していく。 さらに第5段階である「日本型指標システムの開発」にあたっては、日本型指標システム(JASTI)構築に向けた基本的枠組みと構成要素(ST基準・指標)について専門家からの意見徴収を行う。中でも、主要国際機関の連携で構築されグローバル基準化しているGSTC基準に対する意識調査を行う。その成果を踏まえて、日本型STIシステム及び仮説モデルを構築する予定である。 さらに第6段階として「国内における対象地域に対し日本型指標システムの適用」として、1年目の成果を国内で実践する段階へと研究を推進させていく。1つの方策は、研究責任者も中核的に関与している国内観光事業及び観光地へのGSTC適用に関する国際認証プロジェクトとも連動しつつ、より広範なST研究分野を視野に入れながら本研究を推進していくものとする。もう1つのアプローチとしては、3人の研究者の研究をより資源及び産業との関連性に焦点をあて、第1次産業資源を活用した地域活性化プロジェクト、第2次産業資源を活用した産業・文化・都市型ツーリズム、さらに第3次産業資源を活用したリゾート/エコツーリズムを展開する地域での日本型指標システムの導入を目指し、各地域に適したST基準・指標システムを作り上げていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究分担者2は、2016年3月29日から4月4日の期間、米国サンフランシスコ市で開催されたアメリカ地理学協会(AAG)年次大会に参加し発表を行った。学会開催期間が27年度末から28年度初頭へと年度をまたぐ出張となり、27年度の残額では出張経費を一括して支払うには十分でなかったため、27年度の科研費残額分については次年度分と合わせて一括支払いにあてることとしたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度の科研費残額分は、2016年3月末から4月にかけて研究分担者2が行った海外出張にかかった経費について、28年度予算と合わせて一括して支払うために使用する予定である。
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Research Products
(9 results)