2015 Fiscal Year Research-status Report
カント目的論のコンテクストとしてのバウムガルテン「自然神学」の検討
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15K01984
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
檜垣 良成 筑波大学, 人文社会系, 教授 (10289283)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カント / バウムガルテン / 形而上学 / 自然神学 / 目的論 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. アレクサンダー・ゴットリープ・バウムガルテン(Alexander Gottlieb Baumgarten)の『形而上学』(Metaphysica, 1739 Halle. 4. Auflage, 1757)第4部「自然神学」(Theologia Naturalis)の「神の意志」および「神の行為」を検討する前に、そもそも「自然神学」とはいかなるものであるか、そして、「神の意志」の前提となる「神の知性」とはいかなるものであるかを、『形而上学』の先行するテクストを踏まえて明らかにしていった。
2. 特に『形而上学』の全テクストの基礎となる第1部「有論」(Ontologia)第1章のテクストを徹底的に再検討した。その際、後継者ゲオルグ・フリードリヒ・マイアー(Georg Friedrich Meier)の独訳や詳細な解説に加えて、近年公刊されたGuenter GawlickとLothar Kreimendahlによる全パラグラフの羅独対訳版、そしてCourtney D. FugateとJohn Hymersによる豊富な資料付きの批判的英訳をも参照し、訳注を作成して活字化した。
3. バウムガルテンの『形而上学』において頂点に達した近世理性主義であるが、その特徴は概念(ratio)が実在(res)を吸収する点にある。この吸収を象徴するrealitasという概念の中世から近世に至る変遷を再検討して論文に取りまとめ、バウムガルテンの世界観を哲学史の中で浮き彫りにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バウムガルテンの『形而上学』のテクストを再検討するという研究目的は、以前の研究の継続ということもあって、持続的に遂行できた。ただし、「自然神学」のテクストを読み進めるにあたって、「有論」の基礎の再検討を行なったため、「神学」のテクストそのものの検討はそれほど進んでいない。しかし、「有論」の再検討によって「神学」の理解も深まるので、結果的には計画全体は充実すると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
『形而上学』第4部第1章の「神の知性」についてのテクストに見いだされる「知恵」(sapientia)、「思慮」(prudentia)、「全知」(omniscientia)の検討を踏まえて、「神の意志」について論じた第890節から第925節を検討する。「最高善」の理解のためには神における「慈悲」(bonitas) と「正義」(iustitia) を明らかにすることが不可欠である。カントの最終的見解は、神の「慈悲」は「神聖性」によって規定されるというものである。そして「慈悲が神聖性によって規定されること」が「正義」にほかならない。バウムガルテンにおいてこれらの道徳的属性がいかなる関係にあるかを慎重に吟味する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた海外出張を伴なうバウムガルテンおよびカントに関する調査研究が延期となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
延期したバウムガルテンおよびカントに関する調査研究のための研究資料代および資料収集のための旅費として使用予定である。
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Research Products
(2 results)