2018 Fiscal Year Annual Research Report
Denaturalization of "Sex", "Kinship", and "Family" from Foucault, Levinas, and Derrida
Project/Area Number |
15K01986
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
増田 一夫 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70209435)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 親子関係 / 生殖 / 同性婚 / フーコー / デリダ / テリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ハイデガーに想を得たフランス思想家を取り上げ、彼らにおける「人間」を「性」「親子関係」「家族」を通じて考察することを目的としている。最終年度にあたる今年度は、「性」「親子関係」「家族」の議論をより広い文脈で確認したのをきっかけに、特定の思想家たちから、とりわけ近年フランスにおいて同性婚をめぐって展開された議論へと視点を広げた。そのなかで、課題名の中の語としては、「脱自然化」が前景化された。 また、以上のような状況において、「ジェンダー」も必然的に考察の対象となった。ジュディス・バトラーがその発想のいくつかをデリダに負っているとしているので、なかば必然的な帰結ではある。また、フーコーの名が同性婚に反対する議論の中で用いられているのに対し、エリック・ファッサン(Eric Fassin)は同性婚はフーコーが主張していた「関係性の構築」に他ならないので彼が反対することは考えられないと考える。彼の言う関係性と家族や親子関係について考察した。 その考察は、フランスにおける同性婚および親子関係の変化の確認へと導くものであった。この分野では、イレーヌ・テリー(Irene Thery)がかねてから包括的な理論化を試みている。彼女はオランド政権から同性婚に関する報告書を依頼されるが、彼女の持論は、ジェンダーへの「関係論的なアプローチ」から同性婚の制度化を是とする報告書に大幅に取り入れられた。テリーは、今後実現されるべき制度として、「子をなす」意志を持ち親となる同性カップルと、生殖者ではあるが親とはならぬ他の一名というかたちで子どもを作ることの法制化を主張している。その大胆な主張にも、ある意味で親‐子の脱自然化が見られる。 刊行物としては、デリダの死刑をめぐる考察を論文にまとめた。そこで、カントのhomo noumenonとは異なる、しかし「自然」ではない人間観に迫る試みを行った。
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Research Products
(1 results)