2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K01990
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
大須賀 史和 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 教授 (30302897)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ロシア哲学 / 言語哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、20世紀初頭のロシアにおける言語哲学的な議論である「名の哲学」の研究、特にソ連時代初期に独自の体系的記述を目指したA.ローセフの哲学の研究を中心としている。その際、当時のロシアにおける諸外国の哲学の受容なども視野に入れ、構想の内実と今日における意義を検討することが課題である。 初年度はローセフの構想を分析するための準備作業と基礎的な文献の読解を進めた。具体的には、これまでのローセフ研究に関する先行研究の精査を行うとともに、そこから得られた知見を基に初期ローセフの主著のひとつである『名の哲学』や『論理学の対象としての音楽』などの分析を進めた。 そして、8月に日本で開催された中欧・東欧研究国際協議会研究大会において、招聘したモスクワ大学のコーズィレフ教授と共同セッションを組織し、ローセフの構想に見られる「規範性」をテーマとする報告を行い、参加者と討議を行った。 これらを通じて、ローセフが20世紀初頭にカント主義の影響下で倫理学的議論を展開した宗教哲学者たちの主張を踏まえつつ、それを独自の存在論的な知性理解から基礎付けていたことが明らかとなってきた。規範(norm)はヨーロッパ語においては普通の(normal)という形容詞とつながり、あるべき状態の要求を示唆する。ローセフはこれを「である」から「べき」へ至る論理的関係としてではなく、存在者の知性による自己認識の観点から再構成し、経験的な存在の認識に根拠を持ちつつ、存在者の通常あるべきあり方が要求される過程として捉えようとしていた。この自己の存在の認識と規範への意識は、それを表現する言葉と連関するものでもある。こうした存在的な問題関心の言語哲学への導入は論理的な推論を重視する今日の言語哲学の議論にも新たな側面からの検討を迫る可能性があり、今日的にも意義ある論点を示していると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究遂行に必要な資料類の収集が順調に進行しており、随時その精査や分析に取り組める状況にある。また、これまでの研究蓄積を活かして、初年度から国際会議での報告も1本行っており、そこでの議論から得られた示唆を基に、さらに深くローセフ哲学の内実を解明するための糸口も見つかりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度も引き続き追加的な資料収集を行うとともに、主要の文献の読解を進め、一部を翻訳として将来的に公表できるように整えつつ、個別の重要テーマでの研究報告などに活かしていく予定である。 なお、27年度の検討からのフィードバックとして、ローセフが用いる哲学的概念や用語についての検討にも力を入れるべきであると考える。ローセフはいくつかの重要な概念や用語において、ギリシア語からの借用、またはドイツ語からの翻訳借用をしているが、元の文脈内での意味を超えた独自の解釈によってその意味合いや内容を拡張している部分がある。そこでの変化には、ソ連体制下で言及が困難になっていった宗教的な世界観を代弁する機能が持たされており、その点には以前から注目していたが、哲学的な議論の深化という側面でも意義が認められる点がある。今後の研究においては、それを踏まえて研究を進めるよう対応していくこととする。
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Causes of Carryover |
27年度は国際会議での共同セッションにおいて外国人研究者の招聘を行うことを念頭に旅費、謝金等の支出を予定していたが、相手方の都合で謝金等が不要になるなどした一方で、当初想定した以上に追加で資料購入を行う必要が生じるなどして使用額に異同があった結果、少額の次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度は国際会議への報告参加を予定しており、その際の出張において資料収集も同時に行うこととしている。昨年度からの繰越金を使用してこの日程を2日程度延長することができるため、よりスムーズに研究計画を遂行できると考えている。
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