2015 Fiscal Year Research-status Report
フッサール初期・中期時間論の分析とその認知言語学的展開
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15K01994
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮原 勇 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (90182039)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フッサール / 時間論 / 現象学 / 認知言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
フッサール初期時間論のテキスト分析を実施するとともに、ドイツ、フライブルク大学のフッサール・アールヒーフを訪れ、フッサールの草稿を確認しながら、下記の(2)の研究を行った。(1) Husserliana Bd.X Zur Phänomenologie des inneren Zeitbewusstseins (1893-1917)に収録されているテキストの成立年月を確定し表を作った。具体的には、Husserlianaの編纂者Rudolf BoehmとPhB版編纂者Rudolf Bernetによる成立年月の推定を整理し、時期を区分し、一覧表を作成した。(2) Husserliana Bd.Xに収録されている時間意識の変化を表現している図(ダイアグラム)のそれぞれの解釈をおこない、その意味を明らかにした。具体的にはS.28、S.93、S.199、S.210、S.230の各図の分析をおこなった。(3)Husserliana Bd.Xに収録されているテキストに関する、1966年以来の先行研究の検討。特にPhB版編纂者BernetのEinleitungとRudolf Bernet, Iso Kern, Eduard Marbach, Edmund Husserl, Darstellung seines Denkens (1989)と英語への新訳を行ったJohn Barnett BroughのTranslator’s Introduction, in: Edmund Husserl Collected Works, On the Phenomenology of the Consciousness of Internal Time (1893-1917)(1991)などを検討した。また、(4) Husserliana Bd.Xの成立時期に接して書かれた認識論の講義、すなわちHusserliana Bd.XXIV, Einleitung in die Logik und Erkenntnistheorie Vorlesungen,1906/07における初期認識論の基本的構図と「時間意識と時間構成」の章の分析を行った。さらに、認知言語学関係の研究では、Donald W. LangackerのDonald W. Langacker: Subjectification, in: Concept, Image, and Symbol: The Cognitive Basis of Grammar (1991)の分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フライブルク大学のフッサール文庫に所蔵されているフッサールの草稿を直接確認し、出版に際して編纂者によって改編されていた箇所の実際の記述を確認でき大きな成果があった。HusserlianaXの重要な章を分析も進めることができた。認知言語学では、V.EvansのThe Structure of Timeを分析したことは大きな進展であった。 基本的に予定通りの進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
再度、フライブルク大学のフッサール・アールヒーフを訪れ、Husserliana X関係の草稿を確認し、その分析の成果を大学の紀要に発表する。 認知言語学の方面での研究も、時間表現に焦点を当てて、コーパスなどを使用し日英独の比較研究を推進する。
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