2017 Fiscal Year Research-status Report
田辺哲学の複眼的・動態的な方法論による総合的研究と国際連携体制による展開の試み
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15K01996
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉村 靖彦 京都大学, 文学研究科, 教授 (20303795)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 田辺哲学 / 種の論理 / 西田哲学 / 京都学派の哲学 / 宗教哲学 / 現代フランス哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究は、主として次の3点にわたって展開した。 1.田辺哲学研究の年代順の総覧作業の進行。今年度は、「種の論理」前期を集中して扱った昨年度の研究をさらに拡張深化し、「種の論理」期の全体と、それに続いて『懺悔道としての哲学』を端緒に展開する田辺独自の宗教哲学を主題とした。その際、レヴィナスとの並行関係や身体論という前年度からの着眼をさらに掘り下げることができた。その成果は、第5回田辺哲学シンポジウムでワークショップ用に供した長大な原稿にひとまず結実した。 2.国際連携体制の拡大。1の作業と連動させつつ、自らの田辺哲学研究を、本研究の特色の一つである国際連携体制も意識しつつ、西田哲学との関係も含めたより広い視野の中に位置づけることを試みた。そのためにさまざまな機会を利用したが、その例としては、2017年7月の西田哲学会シンポジウム「西田哲学とフランス哲学」での提題や、10月のProject Bergson in Japanでの英語講演などが含まれる。 3.田辺のテクストの仏訳。昨年度の研究実績報告書に記した事情により、田辺のハイデガー論3篇の訳出作業に注力した。訳出作業自体は順調に進んだが、注釈を充実させるために調査を必要とする箇所が思いの外多かったため、まだ完了できていない。本年度が最終年度であったが、主としてこれを完了させる上で不可欠な資料調査のため、予算残額を一年延長して使用することを申請し、承認された次第である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の柱である、研究代表者の田辺哲学研究の年代順の総覧作業と、その過程と成果を国際連携体制の中で共有していく試みに関しては、予定の3年間で、ほぼ当初の目論見通りに進めることができた。ただ、それに付随して進めてきた田辺のテクストの仏訳作業について、予想以上に資料調査が必要なことが判明し、その分遅れが生じることになった。ただしこれは、学術的に正確で価値のある翻訳を仕上げるために不可欠な作業であり、やむを得ないことであったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究本体の完成した部分は、これまで講演やシンポジウム提題、学術論文などで公刊してきたが、これらの全体を総括するような論考を、最終年度のまとめとして仕上げていきたい。また、今年度も海外で京都学派の哲学について講演する予定があるので、それを利用して、本研究の成果を紹介し、批評を受ける機会としたい。田辺のテクストの仏訳については、群馬大の田辺文庫の資料なども活用しつつ、仏語圏の研究者に役立つような、充実した内容のものに仕上げていきたい。
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Causes of Carryover |
研究は概ね研究計画通りに進めてきたが、その一角を占める田辺の論考の仏訳作業について、いくつか補足研究が必要になってきた。具体的には、翻訳の精度を高めるとともに、注釈作成に役立てるため、群馬大の田辺文庫資料やその他の資料を組織的に調査する必要が生じてきたことが、本研究の一部を次年度に延長した主たる理由である。延長した予算は、こうした作業を完遂するための調査費用や資料収集費用として使用すると共に、その成果をすでに遂行済みの研究と合わせて国内外で発表するための旅費の一部に充てる予定である。
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