2017 Fiscal Year Research-status Report
ベルクソン哲学と当時の社会科学の関係に関する文献的・実証的研究
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15K02003
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
三宅 岳史 香川大学, 教育学部, 准教授 (10599244)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 哲学史 / ベルクソン / カトリック神秘思想 / 開かれた社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度では、『道徳と宗教の二源泉』の第三章が、神秘主義(動的宗教)というテーマを扱う一方で、どの程度、実証的方法を保持しているのかを研究した。そうすることで、宗教と哲学の間を揺れ動く『道徳と宗教の二源泉』という著書が、どのように哲学的立場を保持しているのかが分かると考えたからである。 調査では、『道徳と宗教の二源泉』で参考文献として挙げられているHenri DELACROIXやMaxime de MONTMORANDの著書を研究した。これらの文献は神秘思想を心理学から扱うという点で、『二源泉』も基本的なスタンスを共有し、これらの文献と『二源泉』の研究方法にはどのような点で異同があるのかを分析した。 DELACROIXの著作では、心理学といっても客観的アプローチより精神の独自性を宗教などの現象から確認しようとしている。 MONTMORANDの著書では、まず現象を記述してそののちに心理学的解釈を試みるという手法をとっており、その研究にはウィリアム・ジェイムズの『宗教的経験の諸相』やピエール・ジャネの『症例マドレーヌ』にある研究方法、すなわち証言などをもとに研究するナラティヴ・アプローチに通じるところがある。 これは事実として捉えられた、ある種の語りが神秘家の生を明らかにする可能性を示唆するものであり、ベルクソンの実証的形而上学という手法が自然科学モデルから人文・社会科学モデルへと領域を変えるときに自然科学にはなかった要素として注目される。 本年度はさらに詳細な分析にまで踏み込むことはできなかったが、『二源泉』の研究方法を支える実証性については、最終年度の研究課題とも関連する問題であり、そのときにもう一度、このテーマを改めて捉え直すことにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究テーマについては、およそ予定通りに進んでいるが、昨年度の研究テーマについては、まだ半分(レヴィ=ブリュルの文献調査)程度が残っており、こちらは進んでいないため、全体としてはやや遅れている。研究発表についても1年目の成果を発表する予定であったが、原稿を準備している途中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はまず1年目の研究成果の発表原稿を完成させることを優先したうえで、『道徳と宗教の二源泉』第四章の技術論の問題という本年度の課題を進める予定である。また残っている研究課題(2年目)についても可能なところまで進めるが、残っている研究課題は本年度よりも来年度の課題に関連が深いため、時間がない場合は今年度の課題を優先させ、来年度の課題を扱う時に纏めて扱うことにする。
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Causes of Carryover |
物品費については、文献などがwebなどで読めるために余裕が出たものの、次年度以降、必要な文献資料などをそろえていけば使用額は予定に近づくと考えられる。 旅費については、研究発表などの準備が完了すれば、残額を含めて使用する予定である。
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