2016 Fiscal Year Research-status Report
カントの超越論的哲学とメルロ=ポンティの現象学の比較研究
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15K02005
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
圓谷 裕二 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (60227460)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超越論的哲学 / 現象学 / ハンナ・アーレント / 行為論 / 基礎づけ主義 / 歴史主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近現代哲学の二つの潮流である究極的基礎づけ主義の立場と相対的・歴史主義的立場との相互関係および両者の調停を考察する。そのために、前者の立場としてカントの超越論的哲学を、後者の立場としてメルロ=ポンティの現象学に焦点を絞る。 研究の初年度である平成27年度においては、原理的・方法論の観点および存在論・認識論の観点から研究を進めたが、研究の2年目である平成28年度においては、実践哲学の観点から接近している。そのための一つの接近方法として、カントの実践哲学を含む伝統的な道徳・政治哲学とハイデガーの現象学との両者を視野に置いたハンナ・アーレントの政治哲学の研究を進めて、拙論「哲学と政治―ハンナ・アーレントの行為論に即して」を研究成果として結実させた。 この論文は、実践哲学に関して、カント倫理学における基礎づけ主義を批判するとともに、メルロ=ポンティの実践哲学では十分に論じられていなかった行為論を補完するものであり、近現代の上記の二つの潮流を橋渡しする方向性を打ち出したものである。行為を、カントのように理性主義的的観点から捉えるのではなく、あくまでも共同主観的観点から捉え直すことによって、実践哲学における基礎づけ主義と相対主義とを同時に克服する見方を提示している。さらには、メルロ=ポンティの歴史主義的現象学を行為論の文脈で再解釈する方向性をも打ち出している。これによって実践哲学の観点から、近現代哲学の二つの潮流を架橋する手がかりをうることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近現代哲学の二つの潮流である究極的基礎づけ主義と相対主義的歴主義との対立を調停するために、研究の第2年目は実践哲学の観点から考察したのが、そのための一つの方法として、ハンナ・アーレントの実践哲学に着目したが、これによって、カントの道徳哲学とメルロ=ポンティの政治的・実践哲学の両者を克服する手がかりをうることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の第3年目は、近現代哲学の基本的な二つの潮流である究極的基礎づけ主義と相対主義的歴史主義との対立の克服を、美学および芸術哲学に焦点を絞りながら推進していくつもりである。そのためには、カントの第三批判書である『判断力批判』とメルロ=ポンティの芸術哲学との対比を試みながら、両者の間の関連と異同を明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額の発生については、文献図書の発注が年度内に間に合わなかったためである。それについては、翌年度分と合計して使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、次年度の研究に必要な物品費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)