2017 Fiscal Year Annual Research Report
The Comparative Study of Kant's Transcendental Philosophy and Merleau-Ponty's Phaenomenologie
Project/Area Number |
15K02005
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
圓谷 裕二 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (60227460)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カント / 超越論的哲学 / メルロ=ポンティ / 現象学 / 歴史主義 / 相対主義 / 基礎づけ主義 / アプリオリ主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終平成29年度に実施した研究は、カントの基礎づけ主義とメルロ=ポンティの歴史主義的相対主義との比較を、美学・芸術学の視点から遂行した。その際に、カントの『判断力批判』での趣味判断におけるアプリオリ主義のうちに「共通感覚」という相互主観的美的理念を見届けることによって、メルロ=ポンティの芸術論との関連性を追求した。 研究期間全体を通じて実施した研究は次のように総括できる。 カントの超越論的哲学は、決して、人間存在を、人間を超えた立場から一方的に基礎づけるものではない。カントにおいて人間とは、理性的であると同時に感性的な存在であり、自然や文化・社会・歴史に巻き込まれていながら、同時にそのことを基礎づけることのできる存在である。しかしながらカントのこのような人間把握がはたして妥当なものなのかどうかという問題が、メルロ=ポンティの哲学を根本から動機づけている。カントの基礎づけ主義は、人間の感性的在り方を人間自身が基礎づけたり意味づけたりできるのだという前提に立っているが、メルロ=ポンティはこのようなカントの人間観・理性観に対して、身体性や歴史性や偶然性などが人間存在に対してもっている潜在的で無自覚的な働きを現象学的に記述しようとするのである。カントの超越論的哲学とメルロ=ポンティの現象学の比較研究は、メルロ=ポンティの哲学のうちに隠されているこのような考え方を引き出したことに本研究の成果がある。 それとともに、本研究は、カントとメルロ=ポンティの対立・調停・克服を、存在論や認識論の観点からのみではなく、実践哲学や美学・芸術論も含めた総合的観点から試みるという、これまでの西洋哲学研究においては試みられることのなかったものである。この意味において本研究は、その多面性と独創性において、研究の独自性と特異性をもったものであり、西洋哲学の今後の研究に対して一石を投じるものと期待できる。
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Research Products
(3 results)