2017 Fiscal Year Annual Research Report
The Phenomenology and Psychiatry of Memory
Project/Area Number |
15K02014
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
小林 睦 東北学院大学, 教養学部, 教授 (20292170)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 現象学 / フッサール / 連合 / 精神医学 / P.ジャネ / 解離 / 心的外傷 / 心のモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、前年度までの研究成果をふまえて、記憶の構造を統合的に理解し、そこから考えることのできる「心のモデル」を提案することを試みた。そのための主要な課題となったのは、以下の2点である。 ①まず、〈記憶の原理〉としての「連合〔=連想〕(Assoziation)」と〈記憶の病理〉である「解離(Dissociation)」とを比較対照し、両者の補完的な関係性を分析する作業に従事した。こうした作業を通して明らかになったのは、「解離」は「連合」の単なる欠如態ではなく、むしろ、統合されていない離散的な記憶システムが併存している状態こそが「心」の原初的なあり方だ、ということである。 ②次に、①の所見をふまえて、記憶の基本構造を理解するための「心のモデル」を検討することを試みた。こうした研究から推定された「心のモデル」の特徴としては、第1に、私たちの「心」のあり方は、本来「離散的な」複数の記憶システムとして存在していること、第2に、通常は「連合」の働きが離散的な記憶システムを統合しているが、心的外傷(トラウマ)体験などをきっかけに、「連合」が機能不全に陥るということ、第3に、こうして離散的な記憶システムがむき出しになる現象が「解離」だということ、以上の3点を挙げることができる。 以上の研究成果の一部は、『人間探究─現代人のための4章─』第2章「心の哲学─思考・身体・人工知能─」(金港堂)として発表された。
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Research Products
(1 results)