2017 Fiscal Year Research-status Report
フッサール身体論の倫理学的展開：身体行為のなかでの非自覚的自己と責任の所在
| Project/Area Number |
15K02025
|
|---|
| Research Institution | Ishikawa National College of Technology |
|---|
Principal Investigator |
鈴木 康文 石川工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (50302336)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
| Keywords | 現象学 / 身体論 / 知覚 / 注意 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、後期フッサールの身体論に関する遺稿資料を中心に、時間論および倫理学の草稿・講義録に基づいて、いわゆる非自覚的 (無意識的)な身体行為に関する倫理的な研究を目的とする。非自覚的身体行為とは、日常活動において特に自己について意識せずに (それゆえフッサールの表現によれば「匿名的」に)行動することである。 この探究は、一方では彼の時間論を基にして身体行為に関 する自己反省の可能性と限界を捉え、非自覚的・無意識的な行為に関する 自我の関与の仕方を考察するものである。また他方では彼の倫理学研究から、身体行為の責任の所在を捉える条件を見いだす。
本年度は、一昨年度から引き続きフッサールの知覚論における注意の機能について考察した。そのひとつとして、知覚における直観の機能に関して、近年の研究動向を踏まえて再考した。また注意機能の分析にあたって、不注意がいかに生じるかについても論を展開させ、それにより、不注意それ自身が認識されることが可能かどうか、あるいは（他者からの指摘ではなく）自己において再認可能かを議論した。そのため認知科学における「不注意盲」を事例として取り上げて、この現象が知覚のなかでいかに生じるかを分析した。その際、特に時間の把持における意味機能（思念の問題）を分析することにより、注意機能の役割を、時間論のなかで位置づけることを試みた。
さらにドイツ国ケルン大学フッサール文庫において、フッサールの草稿資料収集にあたった。特に今回は、彼の心身論の展開とそれに伴う諸学問の規定を確認した。またさらに初期から中期にかけての意識現象に関し、特に注意機能に関する分析や意志と行為に関して資料収集した。また最近のフッサール研究の動向に関して、知見を得た。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フッサールの注意論から身体機能の関与の仕方を分析し、また時間論における注意機能の位置づけを試みた。さらには初期フッサールの意志論の資料収集にあたり、今後の研究方法の枠付をはかった。その成果を学会で発表し、さらに学術論文に投稿した（現在印刷中）。
|
| Strategy for Future Research Activity |
今年度は、フッサールの意志論や時間論から注意事象を分析し、それによって身体遂行における倫理的側面についてフッサールがどのような位置づけをはかったのかを導く予定である。ただ公務の関係からそれが困難になる可能性が予想されるが、そのばあいでも、注意現象を中心にして一定の成果をだすつもりでいる。
|
| Causes of Carryover |
（理由）
概ねH29年度予定使用額を活用して、フッサール文庫での資料収集を行い、またその資料を収集整理をするためのパソコン購入を行ったが、関連書籍、電子ブックの発行が遅れているため、未消化分が生じた。
（使用計画）
資料収集と、発行が予定されている電子書籍の購入にあてる予定である。
|
