2016 Fiscal Year Research-status Report
證人社と證人書院の間―明清期寧紹地区に見る思想史の転変―
Project/Area Number |
15K02031
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
早坂 俊廣 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (10259963)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 劉宗周 / 證人社 / 姚江書院 / 惲日初 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「證人社と證人書院の間―明清期寧紹地区に見る思想史の転変―」と題し、明末に紹興で劉宗周らが開いた「證人社」と清初に寧波で黄宗羲が切り盛りした「證人書院」について、その構成・理念・運営実態・思想傾向を比較することを通して、明清思想の転変の一様相を実証する。2年目の平成28年度は、牟宗三『從陸象山到劉シュウ山』といった古典的な研究書や陳永革『儒学名臣―劉宗周伝』(浙江人民出版社)といった伝記研究などを分析するとともに、劉宗周の思想を受け継ぐ門人たちの資料の整理にとりかかった。特に、姚江書院に関する資料の整理は、本研究の進展を促すものであった。研究計画書に2年目の課題として記していた惲日初については、長らく逸書とされていた彼の『劉子節要』が発見・刊行され、そこには惲日初の文集も収められた(中央研究院中国文史哲研究所刊)。惲日初に関する資料を整理することを当初の目標としていたが、それが不要になったことは嬉しい誤算であった。なお、惲日初の事績を調べるために、江西省無錫・武進で現地調査を行った。具体的には、惲日初もそこで学を講じたことのある無錫の東林書院、彼の子である惲南田の墓(彼も一緒に葬られている)を訪れ、写真撮影等を行った。また、調査の前後に資料収集を行うこともできた。 実際の研究成果としては、「書評 三浦秀一著『科挙と性理学 明代思想史新探』」(『集刊東洋学』第116号に掲載。単著)と「王畿「慈湖精舎會語」訳注」(『白山中国学』通巻23号。共著)を公表することができた。前者は書評であるが、この執筆は明代思想史の整理という点で今後の本研究の推進に大いに資するものがあった。後者は共著であるが、下訳および完成稿の作成を一人で担当した。「慈湖精舎會語」は楊簡の「不起意」説が中心論題であったため、その部分に限って言えば、劉宗周研究の一環であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
惲日初の著作・文集が公刊されたことにより、予定していた資料整理の必要は無くなったが、その分を姚江書院に関する資料整理に当てることができた。また、惲日初の出身地である常州武進や明代思想史の重要地点である東林書院を訪れ、現地調査を行うことができたため、「おおむね順調に進展している。」と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
劉宗周の「意」理解に関する論文、および事績調査を行った惲日初と資料整理を開始した姚江書院に関する論文に着手する。また、紹興で劉宗周や「證人社」に関する現地調査を行う。
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Causes of Carryover |
現地調査にもう少し日数をかける予定であったが、本務との兼ね合いで日程を確保することができず、調査期間が短めになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度請求額とあわせて、現地調査に携行するデジタルカメラを購入する費用等の一部にあてる。
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Remarks |
どちらも、一般向けに発信した調査報告(所属機関ウェブサイトにおける教員ブログ)である。
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