2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K02033
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
有馬 卓也 広島大学, 文学研究科, 教授 (10232068)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中国哲学 / 前漢時代 / 淮南萬畢術 / 呪術系小児科医療 / 五十二病方 / 民間信仰 / 葉徳輝 / 医心方 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は古代中国における呪術系医療文化の研究を、前漢時代に『淮南子』を編纂したことで知られる淮南王劉安が、一方で編纂したとされる『淮南萬畢術』を手掛かりに、行おうとするものである。そして、『淮南萬畢術』に散見される中国古代における民間レベルの呪術系医療文化、とりわけ子供のひきつけ・夜泣きなどに対する当時の理解と、その治療方法を明らかにし、呪術系医療の解明をめざしている。ただし『淮南萬畢術』は唐代以降に滅んでしまい、現在ではその集本しか存在していない状態である。したがって、本研究は、そのテキストの再考から始めなければならない状況にあった。 平成27年度については、現在『東洋古典学研究』に連載中である葉徳輝本『淮南萬畢術』の訳注を終了させることを計画していた。予定通り39号に訳注(6)を、40号に訳注(7)を掲載して葉徳輝本『淮南萬畢術』の訳注を完成させることができた。と同時に、同40号には「『淮南萬畢術』研究序説」を掲載し、本研究の基本的立場と方法を明らかにした。 また、葉徳輝本『淮南萬畢術』が収録する全116条の文章の分類・整理もある程度行うことができた。ただし、これについては再検討の余地がある。 さらに、『淮南萬畢術』と同系統の呪術系医療行為を載せる『医心方』『本草綱目』『物理小識』等の著作を精読し、葉徳輝が見落とした逸文の収集作業も開始することができ、今後「『淮南萬畢術』拾遺」という形で連載を開始する準備を整えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では葉徳輝本『淮南萬畢術』の訳注を完成させることを平成27年度の目標としていたが、その計画通り葉徳輝本『淮南萬畢術』の訳注を下記の雑誌に掲載して終了させることができた。―『淮南萬畢術』訳注(六)(2015.5 東洋古典学研究39、105-127)、『淮南萬畢術』訳注(七)(2015.10 東洋古典学研究40、79-99) 加えて、本研究の序に相当する部分を「『淮南萬畢術』研究序説」という形で、下記の雑誌に発表することができた。―『淮南萬畢術』研究序説(2015.10 東洋古典学研究40、1-19) さらに、翌年度に開始する予定であった葉徳輝本に収録されていない逸文の収集作業に入ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は各書に残存する葉徳輝が見落とした『淮南萬畢術』の拾遺を作製し、ひき続き『東洋古典学研究』(41号~)に掲載する。さらに現在収集した資料の中から、本課題のテーマである呪術系医療に相当するものを抽出し、その分析を開始する。 と同時に、そこに見られる療法が『五十二病方』などの出土文献や、日本で編纂された『医心方』などとどのような繋がりを持つのかという点の点検も行う。 さらに、現時点で明らかとなったことを、今年11月26・27日に台湾の政治大学で開催される漢代文学与思想国際学術研討会において発表する予定である。
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Causes of Carryover |
購入予定の中国書籍の在庫が国内になく、取り寄せに時間がかかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
図書費として。
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