2015 Fiscal Year Research-status Report
陽明学の伝播と書院祠廟祭祀――嘉靖年間を中心とする考察――
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15K02034
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
鶴成 久章 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20294845)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 陽明学 / 王守仁 / 書院 / 精舎 / 祭祀 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究では、明の嘉靖九年(1530)五月に王守仁の祭祀の中心となる施設として天真精舎が浙江省杭州に建立されて以降、嘉靖十年代に、王守仁を祭る書院・祠廟が各地に広がっていった様子を主に考察した。文献研究の方面では、『王陽明全集』各種、「陽明後学文献叢書」ほかを精読して、王守仁を祀る書院・祠廟建立に関わる記録を探し出す作業を行った。なお、「陽明後学文献叢書」については、本研究を遂行中に、新たに出版された『黄綰集』『胡直集』『張元ベン集』『王時槐集』を入手したので、次年度以降、その内容について詳細に分析を行う予定である。また、文献調査の過程で、『勲賢祠志』(内閣文庫蔵)の「勲賢祠総図」に、勲賢祠の本となった天真精舎とは別の、陽明精舎なる精舎の記載を発見したことから、今後の研究においては、明清時代の古地図や地方志所収の図版も、有益な研究資料になるのではないかと気付くに至った。 現地調査については、7月に、紹興市の陽明書院、嘉興市の文湖書院、衢州市の衢麓講舎、永康市の寿巌書院等の遺址の調査を行った。これら浙江省内の書院と祠廟の調査では、石刻等の資料を直接探し出すことはできなかったが、調査の前後に行った地方志等の調査で、王守仁を祀った書院と祠廟に関する新たな知見が得られた。また、3月には、安徽省池州市九華山で調査を行った。嘉靖十四年に王守仁を祀る仰止祠が建立されたとされる化城寺の周辺には、その遺址は残っていなかったが、化城寺に保存されていた石刻資料群の中に、万暦末期の王守仁の祭祀に関する記録を発見することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した文献調査が順調に進んでいる。また、現地調査についても、おおむね予定通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
文献調査については、地図資料にも調査の手を広げる。また、現地調査については、地点を絞り、調査地点ごとの滞在時間を長くすることで、書院・祠廟の遺址のみではなく、現地の博物館や孔子廟などの調査も精力的に行うこととする。
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Causes of Carryover |
本研究に有用な物品を購入するには些少であることから、敢えて執行しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の物品費に加えて使用する予定である。
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