2015 Fiscal Year Research-status Report
漢から唐に至る太史令を中心とする科学技術と儒仏道三教との関係に関する基礎研究
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15K02035
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
南澤 良彦 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (50304465)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 太史令 / 張衡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は漢代及び魏晋時代の研究を行った。漢代の研究では、1)天文暦法は、前漢の司馬遷がその制作に関わった太初暦、劉キンが太初暦を補修して制定した三統暦、後漢の張衡の著作である「霊憲」(『続漢書』天文志劉昭注補に収録)、蔡ヨウの著作である「律暦意(志)」(現存しないが、『続漢書』律暦志に反映されている)等を研究し、2)天文装置は、前漢の落下コウの渾天儀(渾儀、天文観測装置)、耿寿昌の渾天象(渾象、天文現象のデモンストレーション用装置)、張衡の水運渾天象等を研究し、3)太史令は司馬遷、張衡、後漢の單ヨウ等を研究した。この時代で特に注目すべきは張衡である。太史令としての張衡については、20年前に報告者は画期的な研究を行ったが、近10年の間に進展した研究動向を精査し、太史令であるとともに著名な巧思家としての張衡について再検討を行った。漢代はその中頃(1世紀前後)に仏教が伝来し、後半に初期道教が流行したが、ほぼ儒教独尊の時代といって良いので、三教の宇宙論・天文思想は儒教のそれを中心に、蓋天説と渾天説との論争を再検討した。魏晋時代の研究では、1)天文暦法は、三国~西晋の陳卓の「星図」等を、2)天文装置は、三国呉の葛衡の渾天象等を、3)太史令は、陳卓等をそれぞれ研究した。魏晋の時代は漢王朝崩壊とともに儒教の権威が喪失した時代であり、老荘思想が風靡したが、それが当時の宇宙論、具体的には、宣夜説を復活させた東晋の虞喜の「安天論」等と如何なる関係にあるのかを重要な研究課題とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付が10月にずれ込み、研究開始が半年遅れとなったため、当初計画通りの進捗がはかれなかった。しかしながら、研究開始後は順調な進展が見られ、当初計画の70~80%は達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、交付の遅れにより、進捗状況はやや遅れている。しかしながら、漢代の研究は報告者には相当な研究蓄積があったので、半年をロスしながらも短期間の中にめざましい進展が図られ、また、フレキシブルな研究計画であるため、微調整を行えば、当初の計画通りの研究が遂行され、所期の成果を達成出来る見込みである。
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Causes of Carryover |
交付が半年遅れとなったため、当初予定していた出張が行えず、未使用の旅費が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度実施できなかった出張を次年度以降に繰り込み、未使用の旅費を順次使用する。
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