2018 Fiscal Year Annual Research Report
A textual study of classical Indian theories of truth and error
Project/Area Number |
15K02043
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
片岡 啓 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (60334273)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ジャヤンタ / 錯誤論 / 真理論 / 形象 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画に沿って、紀元後9世紀頃のインド・カシミールの学匠ジャヤンタによって著わされた論理学書『論理の花房』「唯識批判章」に含まれる「錯誤論」の箇所について、2017年度に筆者が出版した批判校訂本に基づいて和訳を作成し、詳細なテクスト構成分析と豊富な脚注と共に出版した。成果は、「唯識の錯誤説に対するJayantaの批判」と題して、2019年3月刊行の『哲学年報』78号に掲載されている。仏教の錯誤論に対するバラモン教側からの批判に関して相当量の資料を提供することができた。また、同章を含むジャヤンタの解脱論箇所について、2018年7月にカナダ・ヴァンクーヴァーで開催された国際サンスクリット学界にて、Jayanta on Kumarila's view of liberationと題した発表を英語で行った。錯誤論が展開される背景となる解脱論に関して、クマーリラとジャヤンタという二人のバラモン教側の学匠たちの態度を明らかにした。さらに、仏教の錯誤論において鍵概念となる「形象」という考え方を取り上げた発表を準備し、2018年9月に開催された日本印度学仏教学会学術大会にて発表し、その成果を『印度学仏教学研究』67-1号誌上に「有形象認識論の形象は非真実か?」と題した論文として掲載、ジャヤンタが批判対象とする仏教側の錯誤論の背景を明らかにすることができた。また、錯誤論と密接にかかわる仏教の概念論についても成果をまとめ、『南アジア古典学』13号、および、『東洋文化研究所紀要』175号誌上にて成果を論文として発表した。4年間の研究期間全体において、当初の予定通り、ジャヤンタの真理論・錯誤論に関して写本に基づく批判校訂本を作成し、そうして作成された新たな校訂本に基づきながら和訳を作成、いずれも『東洋文化研究所紀要』『哲学年報』に論文成果として、順次、公表することができた.
|
Research Products
(6 results)