2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02045
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Research Institution | International College for Postgraduate Buddhist Studies |
Principal Investigator |
堀 伸一郎 国際仏教学大学院大学, 国際仏教学研究所, 研究員 (60339778)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | サンスクリット写本 / 写本識語 / 後期インド仏教史 / 東インド中世史 / パーラ朝 / インド暦 / 赤外線撮影 / 東インド写本 |
Outline of Annual Research Achievements |
東京大学総合図書館・大正大学附属図書館・大英図書館・王立アジア協会・ケンブリッジ大学図書館・リートベルク美術館(スイス・チューリッヒ)でサンスクリット写本の実見調査を行い、東インドに由来することを示す識語を集中的に解読した。東京大学総合図書館ではパーラ期写本識語を精査したほか、東インドで作成されたと考えられる古ベンガル文字写本の識語の中にラクシュマナセーナ暦による日付や筆写者名・寄進者名・作成地名を確認した。大正大学附属図書館所蔵サンスクリット写本はカタログ未刊行であるがOPACで所蔵確認ができる。実見調査の結果、その多くはネパール写本であったが古ベンガル文字写本も数点含まれていることが判明した。大英図書館では、仏教徒の蔵書であることを示す15世紀の古ベンガル文字写本を中心に調査し、ヴィクラマ暦による日付の西暦換算や作成地名の比定ができた。王立アジア協会では赤外線撮影が許可され、汚損により解読困難な箇所、特に固有名詞をより鮮明に解読することができた。ケンブリッジ大学図書館所蔵サンスクリット写本は高精細デジタル画像データがインターネット上に公開されつつあるが、磨耗のためカラー画像でも解読困難なパーラ期写本識語を実見で解読することに成功した。リートベルク美術館ではPancaraksa彩飾写本の閲覧・自己撮影を許可された。「マダナパーラの13年」と明記される東インドで作成された当時の識語と、後代にネパールで加筆されたネワール語識語を解読した。ネワール暦で記述された日付は西暦換算でき、地名(カトマンドゥ)や当時の王名、寄進者名を確認できた。連携研究者の古井龍介はパーラ朝の銅板文書を精査しており、ゴーパーラ4世とマダナパーラのラジブプル銅板文書に関する論文では、当該文書に記される日食の日付確定やパーラ期写本識語の参照など、研究代表者の研究協力の成果が反映されたものとなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内で東インド写本を所蔵する機関のうち、東京大学総合図書館と大正大学附属図書館は研究代表者の所属研究機関に距離が近く訪問が容易なため実見調査は順調に進んでいる。出張で訪問したイギリスとスイスの所蔵機関では、カタログ等で所在が確認できる多数の東インド写本の実見調査ができた。カタログ未記載の東インド写本も実見調査で確認でき、その識語を精確に解読した。
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Strategy for Future Research Activity |
東京大学総合図書館と大正大学附属図書館がそれぞれ所蔵するサンスクリット写本の実見調査は今後も継続する。その他、東洋文庫など国内の東インド写本所蔵機関での実見調査も実施する。海外では、東インド写本を多数所蔵する南アジア・北米の機関に出張して実見調査を実施する。重要な成果は学会で発表し論文を刊行する。テキストのみの写本と異なり彩飾写本は、美術館・博物館が所蔵することも多く従来の写本カタログから漏れた写本が少なくないため、関連雑誌・書籍・インターネットサイトなどで情報収集し所蔵機関に問い合わせる。写本所蔵機関の許可が得られれば写本の赤外線撮影や放射性炭素年代測定を実施したい。識語に記述される地名が現代の村落等に比定できる可能性のある場合は、インド・バングラデシュで現地調査を実施したい。
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