2015 Fiscal Year Research-status Report
口承と文献学の融合に基づくチベット後期中観思想研究
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15K02046
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
西沢 史仁 大谷大学, 文学部, 研究員 (50646643)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | チャンキャ / チベット仏教 / 中観思想 / 教義書 / チャパ / シェーラプジンパ / クンイク sKung yig |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,当初の計画通り,チベット古文書学研究会を発足,『チャンキャ教義書』中観派章の講読の部門と,サンプ寺ニマタン学堂シェーラプジンパ著『中観学説決択集』のクンイク(隠字体)で記された古写本解読の部門の二つを平行して開催した.同研究会は,合計九回開催し,前者の部門では,『チャンキャ教義書』中観派総論及び自立派章(民族出版社本pp. 190-281)の全体を講読,かなり膨大な分量であったが,計画通り,その全訳を完成することを達成,さらに,次年度に講読を予定していた帰謬派章の講読にも入ることが出来た.他方,後者の部門では,三宅伸一郎連携研究者とトゥプテンガワ氏の協力を得て,「クンイク(sKung yig)」と称される特殊な隠字体の読解作業を開始し,そのデータベース作成作業に着手した.その成果の一部は,第63回日本チベット学会のチベット学情報交換会において,三宅連携研究者と共同で「sKung yigについて」という題目で発表した.『チャンキャ教義書』中観派章の解読に際しては,その思想的背景を解明すべく,チャパ・チューキセンゲの『中観東方三論提要』及び『善逝と外教徒の学説の弁別』や,ツォンカパの『善説真髄』,セラジェツゥンパ,パンチェンソナムタクパ,ジャムヤンシェーパ等の中観論書を参考資料として,『チャンキャ教義書』と比較対照する作業を開始した.その成果の一部は,日本チベット学会にて,「チャパ・チューギセンゲの中観思想」という題目で発表した.さらに,『チャンキャ教義書』を主資料として,次年度,「中観帰謬派の開祖について」という題目で発表する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『チャンキャ教義書』自立派章の解読研究に関しては,概ね計画通りに進んでおり,その成果発表も,予定通り,印仏研及び日本チベット学会において行なった.他方,クンイクの解読及びそのデータベース作成作業に関しては,やや遅延が生じている.当初は,年始頃に,セラ寺へ研究調査に入る予定であったが,諸般の事情により,延期することにした.また,チベット古文書学研究会は,講読会の進捗状況に鑑みて,途中から,日数及び回数を増やした.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,『チャンキャ教義書』中観派章のうち,帰謬派章(民族出版社本pp. 281-364)の翻訳作業に取りかかる予定である.この全訳を完成することできれば,同書の中観派章の全体が完遂されることになるので,三年目には,その註記を作成する作業に集中することを目指す.さらに,その思想的背景を明らかにするために,ツォンカパ師弟やセラジェツゥンパ等の先行する一連のゲルク派の中観論書の調査も平行しておこなう.また,現在,シェーラプジンパの『中観学説決択集』のクンイク書体の写本解読作業の遅延を取り戻すため,あらたに研究補助を依頼することも検討中である.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が,約43万円生じた主な理由は,セラ寺への研究調査は,次年度もしくは最終年度に執り行うことに,研究計画を変更したことによる.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
セラ寺への研究調査は,次年度ないし最終年度に執り行う予定.
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Research Products
(4 results)