2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K02050
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Research Institution | The Nakamura Hajime Eastern Institute |
Principal Investigator |
田中 公明 公益財団法人中村元東方研究所, その他部局等, 専任研究員 (00171744)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 密教 / 曼荼羅 / チベット仏教 / ガンダーラ美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年5月に行った中国青海省、拉加寺「大曼荼羅供養祭」dkyil‘khor sgrub mchod chen moの予備調査では、現地到着が遅れたため、砂曼荼羅の制作に先立って行われるひょう(手偏に平)線儀礼を調査することができなかった。そこで昨年4月に再調査を行い、胎蔵曼荼羅のひょう(手偏に平)線儀礼を調査・撮影することができた。調査の成果は、26年11月の日本西蔵学会と、12月の密教図像学会で発表し、論文も学会誌に掲載される予定である。 いっぽうインドでは、考古局のブバネーシュバル支所の収蔵庫に収蔵される曼荼羅的構成をもつチュンダー(准提)の石像を調査したところ、チュンダーの周囲に配される眷属が、チュンダーの真言の文字の尊格化であることがが分かった。そこで27年2月のインド調査の折、インド政府考古局の本部を訪れ、論文に写真を使用する許可を取った。論文は、28年度中に発表する予定である。いっぽうチャッティスガル州のシルプル遺跡からは、2008年に80点もの鋳造の小仏像群が出土したが、長らく一般公開されていなかった。そこで本年2月に現地を調査し、特別に出土品を金庫から出してもらい、手にとって実見することができた。 平成24年に逝去した写真家の藤田弘基氏が撮影したインド・パキスタン・チベット・ネパール仏教美術と遺跡の写真をデジタル化し、データベースを構築する作業を開始した。28年正月からは、副会長を務めるチベット文化研究会会報に「藤田アーカイブス」の連載も開始した。現在は、藤田氏が1992年6月に、パキスタン当局の許可を得てペシャワール博物館で撮影したガンダーラ彫刻の写真を整理している。ガンダーラ地方は、現在イスラム過激派の巣窟となっており、外国人研究者も立ち入ることができない。そのためデータベースの公開は、仏教美術の研究者にとって、大きな助けになると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チベット仏教圏における砂曼荼羅の調査は、予想以上の成果を上げることができた。藤田アーカイブスについても、故藤田氏夫人の茂市久美子氏の全面的な協力により、順調に進捗している。チベット仏教美術の研究については、韓国ハンビッツ文化財団のチベット仏教絵画コレクションの図録を完結することができた。これに対して、サンスクリット語密教文献の研究は、論文を寄稿したイタリア側の事情により、出版が大幅に遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
田中の博士論文『インドにおける曼荼羅の成立と発展』は、平成26年末に米国のWisdom Publicationsと英語版刊行に向けた契約書を交換し、27年秋には、本年早々に初校が出るとの連絡があったが、その後、レイアウトの完成が晩春までずれ込むとの報告があった。そこで出版を加速させるため、28年中にボストンを訪問し、今後の段取りを打ち合わせたいと考えている。サンスクリット語密教文献の研究は、イタリアの学術書に寄稿した『秘密集会曼荼羅二十儀軌』のテキスト研究が、イタリア側の事情で大幅に遅延しているため、28年度からは、それより後に着手した『安立次第論』写本研究の成果を、日本で出版公開することにした。海外調査としては、本年8月に大理で開催予定の中国密教国際学術研討会に招待されたので、あわせて雲南の中国密教とチベット美術の調査を行う予定である。この他、インドとチベット仏教圏でも、いくつかの調査を計画しているが、具体的な日程は決定していない。「藤田アーカイブス」については、ガンダーラ彫刻に続いて、ニューデリーのチベットハウス所蔵のチベット美術のデータベース化を予定している。
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Causes of Carryover |
博士論文の英語版のレイアウトが遅れており、ボストンでの打ち合わせが延期になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Wisdom側の報告通り、本年晩春にレイアウトが完成したら、必ずボストンを訪問するとともに、ボストン美術館、ハーバード大学等も併せて調査する予定である。
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Remarks |
田中公明の個人HP 著書・論文の紹介と正誤訂正・大学講義・講演会等の紹介
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Research Products
(10 results)