2015 Fiscal Year Research-status Report
学校における子どもの死-非業の死の受容に関する宗教学的研究
Project/Area Number |
15K02052
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大村 哲夫 東北大学, 文学研究科, 助教 (30620281)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 慰霊 / 東日本大震災 / 卒業証書 / 学校 / 宗教性 / 追悼 / 供養 / 子ども |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は,本科研に先立って2013年に宮城県,2014年に福島県等において実施した予備的調査に基づいた研究成果を踏まえ,調査内容の精査を行った. 予備調査は震災後の混乱が続く中での実施であり,学校現場の状況も精密な調査に適した環境ではなく、十分な調査は行うことが難しかった.今もなお安定したとは言えないが、震災後4年が過ぎ,学校の統廃合が進み,教員の人事異動も相当数行われたため,学校において震災直後の対応を知る教職員が減り,本格的な調査を行うことが吃緊の課題となった. そこで予備調査の結果を踏まえ設問を工夫し、より答えやすく負担の少ない調査票を作成した。宮城県教育庁等の協力を得て、宮城県内で犠牲者を出した公立の幼稚園・小学校・中学校・高等学校・特別支援学校を対象に、2011年から2016年3月までを調査対象とした調査票を、2016年3月卒業式後に送付した。現在、その回収を行いつつ回答を分析しているところである。 フィールドワークとしては、犠牲者を出した学校における慰霊祭などの調査を行った。 また前回の調査に考察を加えた中間的な報告を、日本心理学会等のシンポジウムで発表し、また海外誌Pastral Psychologyに、Psychological Practices and Religiosity(Syukyosei) of People in Comunities Affected by the Great East Japan Earthquake and Tunamiとして発表するなど成果の国内外への発信につとめている。 さらに『宗教を心理学するーデータから見えてくる日本人の宗教性』(共著、誠信書房、2016年刊行)において、その成果の一部を「第1章 東日本大震災の被災地から見る日本人の宗教性ー非業の死を遂げた子どもたちへの慰霊をめぐって」として公表する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2015年度は調査票の作成および、調査対象への送付、フィールドワークの実施を行った。 その成果は日本心理学会のシンポジウム等で発表し、海外学術論文誌Pastral Psychologyに投稿して採択され、国内においても書籍刊行が進められるなど順調に進んでいる。 また海外調査については、当初計画していた中国四川省の調査が、研究協力者の都合により十分な形の調査が期待できなくなったため延期を余儀なくされたが、新たに中米の調査が可能となるなど研究対象の進展が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2015年度に依頼済み調査票の回収期限は2016年5月となっており、その集計と分析を行う。 その成果は、順次、印度学宗教学会、宗教学会を始め宗教学系、心理学系の諸学会等で発表していく。さらに2016年7月に開催される国際学会ICP2016(31st International Congress of Psychology)においてシンポジウムを組み口頭発表を行う。 また研究者だけではなく心理学に関心がある一般読者も対象とした『宗教を心理学するーデータから見えてくる日本人の宗教性』(共著)を誠信書房から刊行するが、その第1章に「東日本大震災の被災地から見る日本人の宗教性ー非業の死を遂げた子どもたちへの慰霊をめぐって」として執筆している。 海外における子どもの死をめぐる慰霊の現地調査を開始する。2016年度は、中米Guatemaraのマヤをはじめとする先住民族とその混血者などを対象に、種種の宗教が習合した宗教社会における慰霊の実態について調査を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
2015年度に予定していたフィールドワークのうち、海外調査分を2016年度に送った。その理由は、現地協力者の都合により当該年度の調査が十分な効果が期待できる形で実施できなくなったことによる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度は、当初予定していた国際学会 31st International Congress of Psychology(7月)への出席とともに、中米の現地調査(10月から11月)を行うため、繰り越しした基金を含め予定通り執行することができる。
|
Research Products
(4 results)