2015 Fiscal Year Research-status Report
16-17世紀に書写された古代イラン文献の写本研究
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15K02054
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 健 東京大学, 総合文化研究科, 学術研究員 (50745362)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 宗教学 / ゾロアスター教 / マニ教 / イスラーム |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、以下の3つの研究を実行した。 ①16~17世紀に活躍したゾロアスター教神官アーザル・カイヴァーンの墓廟が、2013年にインド・ビハール州パトナー市で発見されたとの研究成果が公表されたので、その遺跡を現地調査した。また、同市内のイスラーム教徒の間に残るアーザル・カイヴァーン学派関連の伝承を収集し、同学派の全体像の解明を進めた。しかし、インド・パキスタン分離の際に、この伝承を伝えていた住民の大部分はパキスタンのラーホールに移住してしまい、現在同地に伝わる伝承は非常に曖昧なものに留まっていた。 ②上記のアーザル・カイヴァーン学派に属すると思われるペルシア語写本を入手し、そのデータ入力作業を行った。これによって、アーザル・カイヴァーン学派の思想内容が一層解明されるものと期待される。 ③中国福建省で開催された「霞浦摩尼教研討会」に出席し、研究発表を行った。福建省には、既に絶滅したと思われていたマニ教を信奉する村が残存しており、生きた化石としての重要性が指摘されているためである。また、福建省マニ教の故地である福州市内の浦西境福寿宮、霞浦県上万村、泉州晋江地区マニ教草庵、蘇内村境主宮を訪問し、現地に残るマニ教遺跡、マニ教儀式(とされているもの)を実見した。この結果、福建省に残るマニ教遺跡は一枚岩ではなく、さまざまな形態で各地に分散的に存続していることが確認された。今後は、より肌理の細かい福建省マニ教研究が必要になると判断された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アーザル・カイヴァーンの墓廟の研究、およびアーザル・カイヴァーン学派の新出ペルシア語写本の入力作業は、概ね順調に推移している。突発的に出現した中国福建省マニ教遺跡に関する研究についても、この科研費によって対応している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度と同様に、アーザル・カイヴァーンの墓廟に関する現地調査と、アーザル・カイヴァーン学派のペルシア語文献の入力作業を中心に研究を進めていきたい。中国福建省マニ教遺跡研究については、この科研内で対応可能かどうか、慎重に検討する必要がある。
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Causes of Carryover |
2015年度に想定していたドイツでのワークショップが、2016年度に延期になった為。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度にボン大学で開催される予定のアーザル・カイヴァーン学派ワークショップへの出席経費に充てる予定。
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