2017 Fiscal Year Research-status Report
16-17世紀に書写された古代イラン文献の写本研究
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15K02054
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
青木 健 静岡文化芸術大学, 文化・芸術研究センター, 教授 (50745362)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ゾロアスター教 / マニ教 / イスラーム / 神秘主義思想 / ペルシア語 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.イスラーム以前のイラン系思想研究の一環として、ゾロアスター教ズルヴァーン主義(拝時教)と、ヘルメス主義占星術、大乗仏教の思想的接点を探った。即ち、イスラーム以前のイランと中央アジアの宗教的・文化的関連性は、ゾロアスター教資料が乏しいこともあって、文献上は明確ではない。そこで、ヘルメス主義の占星術に注目し、その時間論がゾロアスター教ズルヴァーン主義及び大乗仏教へ影響したのではないかという仮説を提示した。但し、未だ試論の段階である。 2.新出のアーザル・カイヴァーン学派文献と思われるペルシア語文献Dastan-e Mobedan Mobedの写本を蒐集し、3種類の写本に基づく校訂版を準備した。校訂自体は2017年度中に終え、今後は翻訳を提示する段階である。 3.西アジアにおける宗教概念を問い直す共同作業の一環として、紀元前1000年頃から西アジアに姿を現したイラン人が使用していた「宗教」の近似値を指し示す単語として、ゾロアスター教中世ペルシア語文献におけるマーンサルとデーンを取り上げて論じた。それらの語義の変遷を追い、後者が紀元三世紀までに「ゾロアスター教に限らず精神的な教え一般」の意味に転化して、サーサーン朝下で「デーン(この場合はゾロアスター教)と王権は双生児」との格言が誕生したとされるに至る過程を追究した。 4.ゾロアスター教の教祖ザラスシュトラ・スピターマの故地の候補の1つとされるホラズム(ウズベキスタン)を訪問し、レポートに纏めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年度に静岡文化芸術大学 文化・芸術研究センターに着任し、校務と教務の負担が増加した為、想定していたよりは研究の進捗は遅れ気味である。但し、時間の経過と共に、業務に慣れるに従って、この遅れは取り戻せると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ゾロアスター教・ヘルメス主義・大乗仏教の思想的関連の追究は、おそらく、アラビア語ヘルメス文書を扱うことの出来る研究者との共同作業にしなくては、今後の方向性を確定できない。 2.アーザル・カイヴァーン学派文献のペルシア語校訂版の作成は、順調に推移している。 3.古代オリエントとイスラーム世界を繋ぐ共同研究は、2017年度で一段落した。 4.中央アジア各地のゾロアスター教遺跡探訪のレポートは、2018年度中に書籍として完成させられる見通しである。
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Causes of Carryover |
2017年度に静岡文化芸術大学 文化・芸術研究センターに着任し、新たな校務負担が生じたため、研究の実施に若干の遅れが発生した。
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