2017 Fiscal Year Research-status Report
ロシアにおける教育コミュニティの形成と宗教―宗教文化教育をとりまく環境
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15K02062
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Research Institution | Seisen University. |
Principal Investigator |
井上 まどか 清泉女子大学, 文学部, 准教授 (70468619)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ロシア連邦 / 国家と宗教 / 宗教文化教育 / 非営利団体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、当初の研究実施計画のうち、2つめの課題を遂行した。つまり、現地調査(資料収集・聞き取り)である。当初の研究計画では、平成28年度にモスクワ、サンクト・ペテルブルク、カザン、平成29年度にロシア極東地域・東シベリア地域の3都市(ウラジオストク、ハバロフスク、ウラン・ウデ)の予定であったが、平成28年度は育児休業にともなう研究中断を行なったため、本年度(平成29年度)は、上記の6都市のうち、4都市において調査を行なった。調査地は、モスクワ、サンクト・ペテルブルク、ウラジオストク、ハバロフスクである。 現地では、資料収集を行なうとともに、宗教団体の信徒有志の敎育活動に関わる聞き取り調査を行なった。対象とする宗教団体の選定については、前年度までの文献調査の成果を踏まえて行なった。前年度までの文献調査の段階では、正教会の信徒が関与していると考えられる敎育活動が多かったために、正教会の活動を選定したが、偏りを避けるため、モスクワでは正教会のほかイスラーム、仏教、ユダヤ教の諸施設において資料収集・聞き取りを行なった。なお、4都市のうちサンクト・ペテルブルクにおいては、同市教育委員会の動向を視野に入れて調査した。サンクト・ペテルブルク市敎育委員会は、公立校に宗教文化敎育が導入されるより前からロシア正教会と協力を旨とする提携を結んでおり、動向が注目されたからである。 現地調査は夏季に予定していたが、冬季・春季にずれ込んだため、研究成果の公開という点では不十分な結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は、当初の研究計画において、①文献・映像資料の言説内容の分析、②現地での調査(資料・聞き取り)の二本立てによって行なう、としていた。平成28年度は育児休業による研究中断を行なっており、復帰1年目である本年度(平成29年度)は、②の現地での調査を遂行することが課題となっていた。平成28年度末の時点での「今後の推進方策」では、現地調査地として「モスクワの1都市(あるいはモスクワ、サンクト・ペテルブルクの二都市)」を挙げていたので、結果として、この二都市に加え極東・東シベリアの二都市、つまり計四都市で調査を行なうことができたこと、また文献・映像史料では得られなかった考察材料が得られたことはたいへん良いことであった。しかし、復帰後、当初の想定よりも学務と研究のエフォート調整が難しく、当初は夏期に予定していた現地調査が冬季・春季にずれこんだため、現地調査後の考察・論文の執筆が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画において、現地調査地として挙げている六都市のうち、残る二都市での調査を順次行なっていくとともに、すでに調査を行なった四都市については、何らかの方法で追加調査を行なう予定である。 文献・映像資料の調査結果と現地調査の考察をふまえた研究成果を、学会での口頭発表および論文などで、順次公開していく予定である。
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Causes of Carryover |
現地調査の資料収集において、公的機関(国立図書館・古文書館)での資料収集に加えて、当該宗教団体の発行する資料が必要となることがある。本研究が現代史に関わるものであるためである。ただ、複数の宗教団体において、上記資料の購入時に領収書が発行されないという状況が複数回あり、それらを物品費として計上することが難しかったため、次年度使用に当てる助成金が生じた。この助成金額と翌年度の助成金を合わせて、翌年度の現地調査費に充当する予定である。
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