2019 Fiscal Year Research-status Report
ロシアにおける教育コミュニティの形成と宗教―宗教文化教育をとりまく環境
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15K02062
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Research Institution | Seisen University. |
Principal Investigator |
井上 まどか 清泉女子大学, 文学部, 准教授 (70468619)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 宗教復興 / 政教関係 / ロシア / 西欧諸国 / 比較 / 比較教育学 / 宗教教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究目的の2つのうち、2つめとして記した「ロシアにおける『宗教復興』の重層性」の分析・解明に注力し、関連領域の研究者と学術交流を深めた。 「宗教復興」は世界的潮流とみられているものの、その内容は極めて多面的であり、当該地域の政教関係の歴史性と深く関わっている。その点を鑑みて、ロシア国内における「宗教復興」と多面性・多層性を明らかにするため、ロシアにおける政教関係において特異な位置を占めてきた正教会の分派とされる古儀式派について、そのソ連解体後の動向を歴史的に分析しようと試みた。この点については、日本の研究組織でありながらロシア・ウクライナの代表的研究者も参加している「古儀式派研究会」で口頭発表を行ない、研究成果を問うた。 また、上記のようにロシア一国の状況のみから「宗教復興」を論じることはできないため、西欧諸国との比較を通じて類型化を試み、日本宗教学会の口頭発表によって、その妥当性を問うた。さらに、「宗教復興」に関する議論が社会学的アプローチに偏ることを避けるため、思想史をめぐるアプローチの可能性を模索し、学術交流を行なった。 2つの研究目的のうち、1つめの「当該地域の公教育における宗教教育の社会的役割」については、前年度に続き、比較教育学およびロシアにおける教育学の研究会で研鑽を積んだが、研究成果としては次年度以降に公刊の予定である。 なお、丸善から本年度に出版された『ロシア文化事典』の編集作業においては、宗教に関わる章(「3章 信仰」)の編集に携わる機会を得た。この編集作業を通じて、ロシア文化・社会・歴史に関わる国内研究者と交流し、広くロシア社会・文化における宗教あるいは信仰の占める位置を俯瞰的に位置づけ直すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概要に記したように、本年度はた「ロシアにおける『宗教復興』の重層性」を多角的にアプローチすることを試みたが、同時に現地調査としてカザン(ロシア連邦のタタールスタン共和国の首都)で参与観察およびインタビューを冬季から春季にかけて行なうことを予定していた。同地は、公教育における宗教教育という視点からも重要な地域と考えている。しかし、COVID-19の流行により、かりに現地に入ることができても、調査の実施は困難な状況となり、現地調査を断念することとなり、遅れは否めない。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19の終息が見通せない現段階において、文献資料を中心とした研究を主軸に据える予定であるが、本年度に口頭発表で成果を問い、公刊していないものについては、公刊のための準備を進める。 また現地調査については、完全に断念するのではなく、現地での対面、ではない形式での調査の可能性を探る必要がある。
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Causes of Carryover |
冬季から春季にかけて現地調査を行なう予定であったが、COVID-19のため、調査の延期を余儀なくされ、おもに現地調査のための費用が次年度に繰り越されたことによる。
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[Book] ロシア文化事典2019
Author(s)
沼野 充義、望月 哲男、池田 嘉郎
Total Pages
886
Publisher
丸善出版
ISBN
978-4621304136