2017 Fiscal Year Research-status Report
「知的障害者との共同生活」運動の国際的展開の実体と平和学への貢献可能性の研究
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15K02063
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
寺戸 淳子 専修大学, 文学部, 兼任講師 (80311249)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 宗教学 / 人類学 / 倫理学 / 障害者 / 市民社会 / 権利 / 平和学 / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は長期滞在調査は行わず(静岡とパリの共同体でインタビューを実施)、調査結果の分析と成果の発表に重点を置いた。また5月9~11日にパナマシティで開かれた「子どものための宗教者ネットワーク第5回フォーラム -子どもに対する暴力をなくす-」国際会議に出席し、平和学に関する非常に貴重な経験を得、見聞を広めることができた。 1)論文:「共同体」には「死別」を受け止めるという重要な役割があるとの観点から、論文「「彼らが幸せでいられるなら」-声/権利・責任-」をまとめた。 2)学会発表、その他の発表:①8月30日から9月2日にかけてリスボンで開催されたEAJS(ヨーロッパにおける日本研究者の学会)国際大会で、現在までに4カ国の5つのラルシュ共同体で行った調査に基づき、「暴力」の問題に注目しながら「ラルシュ共同体の国際比較」というタイトルで発表を行った。異分野の日本研究者との交流によって、新たな比較研究の可能性が生まれた。また大会後に、パリのラルシュ共同体の調査および関係者のインタビューを行った。自立支援と重度障害者支援を兼ね合わせた新しいタイプの共同体で調査できたことは大きな収穫だった。9月16日に日本宗教学会第76回学術大会で「パネル:宗教・障害・共同体-障害と共に生きることの宗教性-」の一員として行った発表では、フランスで社会貢献活動に参加する若者を支援する団体の協力者から得た情報に基づき、「市民社会の一員であること」と「共同体への帰属」の「補完性」という観点から考察を行った。その成果を論文「市民社会における〈ラルシュ〉共同体運動の意義」(査読あり)としてまとめた。 ②12月26日に「現代における宗教の役割研究会」の第64回コルモス研究会議「テーマ「壁を越え、つながりをつくる」-排除と孤立の時代に向き合う-」で基調講演「国際ラルシュ共同体運動がめざす平和への道」を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界各地のラルシュ共同体で行った調査の成果をまとめる概念・枠組みについて、今年度は大きな進展があった。なおこれには、子どもに対する暴力の問題に現場で実際に取り組んでいる世界の団体・個人が顔を合わせた国際会議への出席、および、「差別・排除」の問題をめぐる共同研究の一員として参加した熊本調査(ハンセン病施設・地震被害)の経験が、大いに役立った。本年度は「暴力」を巡る問題と、暴力への具体的な対応の現場について、今までにはなかった知見が得られ、考察が深まった。 懸案のバングラデシュのラルシュ共同体調査は平成29年度も実現できなかったが、現地で長年にわたって支援を続けているJOCS(日本キリスト教海外医療協力会)とつながりが生まれており、平成30年度には短期間でも現地調査ができる可能性を探っている。
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Strategy for Future Research Activity |
バングラデシュのラルシュ共同体での調査を計画している。また本年度は、今までの研究成果をまとめ書籍化することを目標に、論文執筆に重点をおいて研究を進める。
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Causes of Carryover |
バングラデシュのラルシュ共同体の調査が予定通り進んでいないため、次年度使用額が発生している。平成30年度に上記調査計画を実現するべく取り組んでいく。
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Research Products
(5 results)