2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02064
|
Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
渡辺 祐子 明治学院大学, 教養部, 教授 (20440183)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 近代中国 / キリスト教 / 信教の自由 / 宣教師 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度(平成27年度)の研究実施計画で論文執筆のテーマとした「在華プロテスタント宣教師の不平等特権認識の変遷」については、資料収集と資料の読み込みの段階にとどまっているものの、執筆に向けた準備は整いつつある。
これと並行して中国ならぬ満洲国における「信教の自由」を考察する機会が与えられた。このテーマはすでに2009年に出版した共著の中で若干言及しているものの、さらなる掘り下げをしないままの状態に置いていたものである。満洲国における「信教の自由」の問題とは、1935年以降問題化する孔子祭参列(孔子廟での拝礼)とキリスト教信仰との衝突であり、1941年以降全面化する神社参拝とキリスト教信仰の衝突を指す。こうした神ならぬものへの拝礼の強制、あるいは強制に近い要求に中国人教会および外国人宣教師(この場合はスコットランドとアイルランドの長老教会)がどのように反応したのか、在満洲国の日本の教会人、牧師たちの姿勢はいかなるものであったのかを、これまでほとんど使われてこなかった宣教師アーカイブを用いて分析し、現在論文にまとめつつある。 本テーマの一つ目の論点である孔子祭への参列は、すでに袁世凱政権下で孔子教国教化画一部の知識人によって提唱される中、教育の徳目として重要視されていた。しかし袁世凱の死去と、キリスト教会を中心とする孔子教国教化阻止の運動、すなわち「信教の自由」のための運動によってその流れがせき止められたのであった。その意味でこの研究は、本研究課題にも直接かかわるだけでなく、「中国における信教の自由史」の一角を占めるものとなろう。
2015年度は上記の研究活動に加えて、8月には山東大学で開催された国際学会に参加、さらに10月には香港建道神学院で開催された国際学会に参加し、研究発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由は複数ある。 上記でも述べたように、当初予定していた研究課題とは別のテーマに取り組むこととなっため、研究実施計画を部分的に変更したことが一つ目の理由である。 二つ目は私的な理由であるが、家族の相次ぐ入院という予期せぬ事態が発生したため、長期休みを利用して世界キリスト教協議会図書館(スイス・ジュネーブ)で行う予定にしていた資料調査は先延ばしせざるを得なくなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2016年度(平成28年度)は、前年度の積み残しである課題の調査研究をまずは進めてゆく。 当初掲げた研究の目的及び研究実施計画は変更せず、予定通り①「近代中国における『信教の自由』概念の導入と受容」、②「教育権回収運動とキリスト教教育の自由」のテーマをそれぞれ追及し、①については論文の執筆を目指す。 また、昨年度実現を見なかった世界キリスト教協議会図書館における資料収集を、春休み期間に行う。 国際学会への参加もいくつか予定している。9月には上海復旦大学で行われる国際セミナー「近代東アジアキリスト教教育と文化アイデンティティ」で発表を行うほか、11月には寧波大学での国際学会、12月には台湾キリスト教史学会大会にそれぞれ参加する。
|
Causes of Carryover |
昨年度の春休みにジュネーブの世界キリスト教協議会図書館で資料調査を行う予定であったが、私的理由(家族の入院)のため実施が困難になった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越分を、昨年度実施できなかった調査研究のための渡航費、滞在費に充てる。
|
Research Products
(4 results)