2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K02072
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
李 孝徳 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90292721)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 人種主義 / レイスズム / 植民地主義 / 排外主義 / 移民 / 先住民 / ポストコロニアル |
Outline of Annual Research Achievements |
研究開始の年度ということで、理論的フレームワーク構築のための準備とこれまでの研究の蓄積があまりない先住民に対する人種主義の現状の調査に注力した。 前者の理論研究においては、現代の人種主義がどのように発動されているのかを検討するべく、現在、フランス社会で亢進しているイスラーム・フォビアを人種主義の観点から検証し、グローバリゼーション下で植民地主義とナショナリズムが「移民」という社会的マイノリティを他者化する現在の人種主義の機序について論じた。その成果は、李孝徳「フランス共和主義とイスラーム嫌悪」と長谷部美佳・受田宏之・青山亨編『多文化社会読本』東京外国語大学出版会、2016年、41-53頁として刊行した。後者の調査では、本研の対象になるのがアイヌの人々なので、現在の集住地域である北海道の旭川市と白老町で調査を行い、その国際社会での参照軸として先住民の研究と政策が最も進んでいる地域の一つであるハワイを調査した。旭川市では旭川市博物館内にある展示と資料を調査し、また、川村カ子トアイヌ記念館を訪問して旭川アイヌ協議会の代表からアイヌ文化振興法以後のアイヌの人々において形を変えながら継続する人種主義についての知識を得ることができた。アイヌの人々の集住地域である白老町では「アイヌ民族博物館」において、どのように「民族文化」が表象されているのかを展示と図書を中心に資料で調査し、日本における「先住民」の文化保存の現状を学んだ。また、ハワイのハワイ大学・マヌア校では、先住民族の権利に関する国際連合宣言」以後のハワイ州並びに合衆国連邦法に関する体系的な資料がKa Huli Ao Center for Excellence in Native Hawaiian Lawにあることがわかり、今後のアイヌ研究に資するものであることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フランスにおけるイスラーム・フォビアの分析から、欧米における人種主義研究の動向について体系的に理解する土台が構築できると同時に、日本の人種主義について理論的に適応可能なフレームワークの構築に見通しが立てられた。また、アイヌの人々に関して現地調査を行ったことで先住民研究をエスニック・スタディーズではなくレイシズム研究として行う視点を確保でき、先住ハワイ人における現在の政策について体系的に調査できるアーカイヴにアクセス可能であることがわかったことで、今後のアイヌの人々に関する研究の参照軸を持つことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
日本における人種主義研究についての理論的フレームワークを構築する見込みが一定度できたので、欧米における人種主義の研究者と研究会を行って、申請者が構築しつつある日本における批判的人種研究の理論について討論する。 また、引き続き日本における人種主義の実情を調べるために、今年度は沖縄で現地調査やインタビューを行う予定である。
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Causes of Carryover |
一部の物品に価格が当初の予定よりごくわずかに割引などで変更が生じたため、端数の余りがでた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
265円というごく少額の使用額なので、次年度分に繰り越しても問題がない。
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