2015 Fiscal Year Research-status Report
ソクラテス以前哲学におけるいわゆる無神論の実相の解明とその史的展開の再検討
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15K02076
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
三浦 要 金沢大学, 人間科学系, 教授 (20222317)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ソクラテス以前 / 汎神論 / 無神論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,古代ギリシアにおけるいわゆる無神論に関して,特に前6世紀以降のソクラテス以前哲学者を中心に前4世紀のエウヘメロスまでを射程に入れて,その実相と史的展開のあり方を検討するものであるが,27年度においては,まずミレトス派の一元論的自然観を背景とした汎神論とクセノパネスの単一神論を再検討した。ミレトス派の自然哲学は汎神論を核とするが,それは厳密な意味での無神論ではない。しかし,その自然哲学の脱擬人主義を強調するあまりに彼らが神と自然とを端的に同一視する自然神論を唱えたと解することもできない。むしろそれは,性をもたない知性としての神を構想する単一神論への契機を含んだいわば「汎-魂論」と言える。そして,「知」としてのロゴスを自然万有の原理としたヘラクレイトス,そして「一なる神」を唱えて既存の宗教を批判したクセノパネスも,同一のラインで解釈できるだろう。 また,エレアのパルメニデスについては,彼の思索を,非人称的実在への神的性質の適用を通じた「無神論」であるとする解釈について検討した。パルメニデスは形而上学を哲学的神論から引き離したと解されることがあるがそうは言えない。神話的表象を通じて,彼は実在に神的様相を見て取っていたと言える(ただし,それは論証を伴っていないが)。間接資料ではあるが,プラトンの『パルメニデス』と『ソピステス』を,存在の問題を継手とする有機的連関の元で考察するとき,そこでのエレア派的一元論批判,形相論批判はむしろパルメニデスにおける形而上学の枠内での哲学的神論の存在を示唆しているように思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,「古代原子論も含めたソクラテス以前の自然哲学における異端的無神論の解明」を27年度の課題とし,これを特に①ミレトス派,②コロポンのクセノパネス,③エレアのパルメニデス,のそれぞれに即して考察することとしていたが,いずれの点においてもフォローできたと考える。ただ,①に関しては特にアナクシマンドロスの考える原理が他のミレトス派の人々のそれと安易に同定することができないという点についてさらに考察を深める必要性を感じている。「おおむね」と自己評価したのはそのような理由による。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に大きな変更はなく,今後の研究課題の推進方策については,当初の計画通り,史的展開という観点から,各哲学者(特に次年度は多元論者)の著作原典及び二次資料を研究書・論文も参照しつつ正確に読解し,それを踏まえて彼らの無神論(あるいは異端的神論)を比較検討するというものになる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は,当初予定していた海外調査研究を健康上の理由により取りやめて,次年度に実施することとしたために使用されなかった「外国旅費」である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画では次年度も海外調査研究を予定しており,27年度未実施の海外調査研究については,次年度に当初よりも期間を延長して実施することとし,「次年度使用額」はそれに充当する予定である。
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