2016 Fiscal Year Research-status Report
ソクラテス以前哲学におけるいわゆる無神論の実相の解明とその史的展開の再検討
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15K02076
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
三浦 要 金沢大学, 人間科学系, 教授 (20222317)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ソクラテス以前哲学 / 神論 / 神話と哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,ソクラテス以前哲学に先行する叙事詩人たちの記述する伝統的宗教での有神論とその延長線上にある自然哲学者における神論との関係を検討した。宗教感情は,人間を遙かに超えた力ないし秩序が存在しているという漠然とした理解に基づくものだが,その基本理解自体は初期の哲学者たちも共有している。示唆されるだけの存在の形姿や能力を一般の人間は知りようもない。それを語り聞かせるのが詩人であり自然哲学者だとすると,両者の違いはどこにあるのか。自然哲学的神論と宗教的有神論の共存が現に一部の自然哲学者の言説に見られる以上,自然哲学と神話的思考とを対立関係において捉えることは避けるべきである。 じっさい,自然哲学者においては,伝統的な神人同形論は徹底的に排除されるが,神々のいわゆる自然化は宗教感情の排除と表裏をなすものではなく,自然万有における抽象的原理は依然として「包括する」「操る」「知あるもの」「心」といった表現を受け容れる人格的要素を内包した能動的作用者であって,その限りで,自然哲学者たちによる自然研究は,M.BeardsleyとE.Beardsleyがその宗教の定義において言うところの「人間ならざるもの」を排除しておらず,しかも自然哲学者にとっての原理はあくまでも「超自然的なもの」でなく「非自然的なもの」でもなく,むしろ「自然内的なもの」として自然の説明原理となっている。そして同時にまた,彼らの神論はM.BeardsleyとE.Beardsleyによる宗教の定義を満たすものでもあって,それゆえに,彼らを無神論者と見なすことはきわめて不適切であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の課題は,ソクラテス以前の自然哲学における異端的無神論の解明と古典記までの伝統的宗教における有神論の内実の解明であったが,ほぼ予定通り研究を進めることができた。ただ,パルメニデス以後の自然哲学者でその神論が自然哲学の中で重要な位置を占めるエンペドクレスについては,まだ十分に検討しきれていない部分がある。「おおむね」と自己評価した理由はそこにある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に大きな変更はなく,今後の研究課題の推進方策については,当初の計画通り,史的展開という観点から,各哲学者(特に次年度はソフィスト)の著作原典及び二次資料を研究書・論文を参照しつつ正確に読解し,それを踏まえて彼らの無神論を比較検討するというものになる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、当初予定していた海外調査研究を健康上の理由で取りやめて,次年度に実施することとしたために使用されなかった「外国旅費」の一部である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画では次年度に海外調査研究を予定しており,28年度未実施の海外調査研究については,次年度に当初よりも期間を延長して実施することとし,「次年度使用額」はそれに充当する予定である。
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[Book] 哲学中辞典2016
Author(s)
(項目執筆)三浦要,尾関周二,後藤道夫,古茂田宏,佐藤和夫,中村行秀,吉田傑俊,渡邉憲正,青木健,池田忍,岩佐茂,景井充,金井淑子,清眞人,小林春夫,高哲男,中河豊,中畑正志,早川紀代,戸田清,ほか178名
Total Pages
1390(21-22,44-45,291-292ほか担当総ベージ数32)
Publisher
知泉書館
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