2017 Fiscal Year Research-status Report
ソクラテス以前哲学におけるいわゆる無神論の実相の解明とその史的展開の再検討
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15K02076
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
三浦 要 金沢大学, 人間科学系, 教授 (20222317)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 古代ギリシア / 無神論 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,「ソフィストたちにおける宗教的懐疑主義と不可知論の内実」を明らかにすることを主眼にしながら,併せて,前年度まで考察した古代原子論と密接に関わりのあるエピクロスの原子論における神観について考察した。ソフィストはプロタゴラスを筆頭に懐疑主義ないしは不可知論を唱えたとされるが,しかし彼らも一様ではない。不可知論は必ずしも厳密な無神論とはならないが,プロディコスのように人間は有益な事物や人物を神と見なしたと主張したり、クリティアスのように宗教を人為的な装置だと主張する合理的な宗教観も現れてくる。言うまでもなく,ソフィストは一つの学派ではなく,あくまでも思想動向であるがゆえにこのような状況になるわけだが,懐疑主義も含めて彼らに共通する「合理性」が必ずしも等しく無神論につながっていくものではないということを考察した。また,エピクロス自身はデモクリトス同様に無神論者ではなかったと思われるが,原子論を前提としたその「テトラパルマコス」において,神々に関する臆断を排除し,死後の魂の存続を否定したために,ストア派から批判を受けることになった。このエピクロスについては,特に死についての考察を,後のエピクロス派のルクレティウスによる議論も参照しながら検討した。ルクレティウスに見られる「対称性に訴える論証」は,エピクロスによるいわゆる「死の無害説」には直接見いだすことのできないものだが,現在という時間を基点にした論証とみなす限りでエピクロスの主張(つまり宗教的神観で重要な要素となっている死後の魂の存続の否定)を十分に補完するものであることを考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の課題はソフィストにおける宗教的懐疑主義と不可知論の内実を考察することであったが,ほぼその考察は行うことができ,また当初考察の対象に入れていなかったエピクロスおよびルクレティウスについても補完的に考察した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に大きな変更はなく,今後の研究課題の推進方策については,当初の計画通り,史的展開という観点から。エウヘメロスの『聖なる記録』について,二次資料も参照しつつ読解を行っていき,これまでの考察の総括を行う予定である。
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Causes of Carryover |
今年度予定していた国内,国外の大学等への資料収集を健康上の理由からとりやめたため。なお,この資料収集は翌年度に実施することとする。
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[Book] プルタルコス『モラリア12』2018
Author(s)
(翻訳および解説)三浦要,中村健,和田利博
Total Pages
370(担当部分:1-157,312-339)
Publisher
京都大学学術出版会
ISBN
9784814000982