2018 Fiscal Year Annual Research Report
Positive and comprehensive studies in the relationships between Diderot's political thought and materialism
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15K02078
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
王寺 賢太 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (90402809)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ディドロ / 所有権 / 政治的自由 / 文明化 / 歴史 / フィジオクラシー / (反)ユートピア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究は、『両インド史』へのディドロの寄稿断章を中心に、所有権・政治・歴史の関係についての議論を考察することに宛てられた。『両インド史』の1770年初版では、ユートピア的理想化をこうむっていた、中国・インカ帝国・イエズス会パラグアイ布教区の叙述は、1780年第三版までにすべてその理想性を否定される。ディドロが主導したこの批判(改稿)の背景には、ケネー以下の「合法的専制」論批判があり、私的所有権を排する統一的・均質的・不変的な政治経済秩序を理想的なものとはみなしえないというディドロの懐疑があった。私的所有権こそ、専制的権力行使から逃れる、個人の自由と個人間の社会的関係の基礎と考えられたのであり、ディドロにおける商業発展による文明化=解放の理念も、黒人奴隷制批判・アメリカ合衆国独立支持も、政治的に自由な主体(市民)の形成には、経済的に独立した所有と勤労の主体形成が前提になるという発想に淵源する。ディドロは、この文明化の歴史的ダイナミズムが「ヨーロッパの拡大」の原初的暴力によって始動したことを良く認識しつつ、すでに不可逆なこの過程のなかに、政治的自由の確立の契機を見出そうとしたのであった。 この研究のため、アルゼンチン(パラグアイ布教区所在地)・フランスで資料調査を行った。研究成果は、10月の日本フランス語・フランス語文学会(新潟大学)と2月の日韓セミナー「政治と文学―18世紀フランスで哲学を書くこと」(京都大学)で口頭発表されたほか、日本語論文2つ(うち1既刊)・フランス語論文1つに結実している。このほかに、フランス語の研究成果として、『両インド史』批評校訂版第二巻(共編・編集協力)と2013年のパリでの「今日におけるディドロと政治」での発表論文が挙げられる。
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Remarks |
Diderot et la politique, aujourd'huiは2013年の国際シンポジウムの告知
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