2017 Fiscal Year Research-status Report
占領期日本の接触空間と他者認識―越境する歴史認識の構築に向けた思想史的研究
Project/Area Number |
15K02080
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
長 志珠絵 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (30271399)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 占領期 / 地域文化 / 生活史 / 空間認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度を控えた三年目の実績としては、1 思想史社会史研究の課題としての、占領期のアクター及び接触空間・異文化接触という課題を具体的な地域研究を通じて情報収集と議論を深め、そのアクチュアルなあり方をさぐり、占領期認識と戦後復興論に代表される地域の近代化論との関係を考察すること、 2 初期占領期にとって資料的には地つづきの「防 空」関係資料や調査などを具体的な手がかりとしつつ、帝国の記憶の変容と戦後日本の歴史認識にとっての占領期というフィルターという観点から戦後認識を照射することーの2つの観点から作業を進め、前年度までの調査や海外も含めた発表の成果を査読論文や共著本等の出版物として刊行した(長 志珠絵 論文「せめぎあう「戦後復興」言説ー佐世保に見る「旧軍港市転換法」の時代」北澤満編『軍港都市史研究Ⅴ 佐世保編』清文堂出版,2018.2,165~225頁、長 志珠絵「脱「兵曹文化」への模索-軍港都市・佐世保にみる占領と駐留のはざま-」)。 1については、関連する他機関や科研プロジェクトの招請を得、学術交流つとめたほか、新たに「占領と地域文化研究会」を立ち上げ、1回目は関西ジェダー史カフェ研究会と共催で西川祐子『古都の占領』の書評会を行い、2回目は、神戸占領を軸に若手研究者と占領期の写真コレクターを招請して研究会を持った。どちらも関西圏にとどまらない若手を含めた学際的な研究者の参加を得、ひろがりのある議論を持つことができた。最終年度ではさらにこれらを積み上げシンポジウムを持つほか、報告集を作る予定である。2については、神戸空襲を記録する会収集による神戸市財務課寄贈の戦時・戦後史コレクション群の整理を行い、神戸占領をめぐるスケッチ、被災者の往復書簡や日記、座談会出版物など文化研究としての初期戦後史資料群の存在を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの取り組みについて、出版物としての刊行ができたこと、また上記にあげた1と2の課題について、招請による報告や公的な調査、一定の規模を持つ研究会の実施など、具体的な成果をあげることができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
2017年度末に編集予定だった冊子の刊行および、1と2の課題にそって、収集した資料の整理および補填による単著論文等の成果報告・発表につとめるほか、若手招請も含めた研究会の継続と成果報告としてのシンポジウムを計画中である。なお長 志珠絵「脱「兵曹文化」への模索-軍港都市・佐世保にみる占領と駐留のはざま-」は、坪井秀人編『敗戦と占領』(シリーズ「戦後日本をよみかえる」、臨川書店)として、2018.5刊行予定が決まっている。
|
Causes of Carryover |
主に資料調査に関わる交通費出費の誤差による。資料整理実施の最終実施日が資料所蔵機関の都合で3月の後半にずれ込み、修正の微調整がまにあわなかったため3000円台の少額誤差が生じた。
|
Research Products
(5 results)