2018 Fiscal Year Annual Research Report
Studies of Comparative Thought on the Metaphysical Problems Concerning Life Emergence
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15K02086
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
冲永 荘八 帝京大学, 文学部, 教授 (80269422)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生命 / 創発 / AI / 意識の死後存続 / 記憶 / 機能 / 生気論 / 物質+α |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度である平成30年度は、生命と生命ではないものとの境界について反省を促す事例として、人間の意識内容をコンピュータにアップロードする試みの特徴と、その問題点について考察した。具体的には、生きている人間の記憶や習慣などの内容をAIに保存し、それを備えたロボットの作動によって出力させることで、もとの人間と同じ行動、言語活動などを可能にさせ、意識の死後存続をはかる試みである。 意識内容のアップロードでは、記憶や習慣などの私の意識の情報の保存が、私という主体を保存することになるのか、という問題があった。しかし、生身の人間においても、意識とその主体とは区別ができず、何が私という主体なのかは不明である限り、頭蓋の中の情報と、コンピュータ内の情報とを本質的に区別できるかという考えも一定の妥当性を持っていた。しかしそれは人間をAIと見なすのではなく、反対にAIや世界の方を汎意識的な観点から眺め返せることを意味していた。 研究期間全体を通じた成果として、生命と生命ではないものとの断絶を決定的なものと見ない複数の観点から、生命を考察し直すことができた。物質からの生命創発に関しては、物質にない別の何かがそこに生じるのではなく、両者は連続的であり、ふたつを分けることで便宜的に世界を説明している私たちの見方が、それらを断絶させていると考えることができた。また生気論の考えに対しても、物質とは別の生命の素因が存在するのではなく、物質現象を説明するのに都合よい法則と、生命現象の説明のための法則とを私たちが区別して持つゆえに、物質とは別の生気が考案されたと考えられた。さらに生身の人間の意識の情報とAIにアップロードされる情報も、それぞれ異なったコンテクストで見るゆえに区別されるのであり、実際はそこに共通した地平も多く含まれることが確認された。これも生命と非生命との連続性の視点から反省できる成果であった。
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Research Products
(5 results)