2017 Fiscal Year Research-status Report
摂関期・院政期の宗教思想研究―菅原文時と永観を起点に―
Project/Area Number |
15K02087
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉原 浩人 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80230796)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 菅原文時 / 菅原道真 / 慶滋保胤 / 大江匡衡 / 永観 / 大江匡房 / 『往生拾因』 / 『心性罪福因縁集』 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、摂関期・院政期における文人貴族と僧侶の思想を、菅原文時(899~981)と永観(1033~1111)を起点に、周縁の人物や作品についての研究を進めることを目的とする。両者の直接関係はないが、ともに摂関期と院政期を代表する人物である。菅原文時は、菅原道真の孫で、慶滋保胤・大江匡衡・紀斉名ら多くの弟子達を育てた。永観は、東大寺僧であるが浄土思想に傾倒し『往生拾因』『往生講式』などの著作がある。また大江匡房(1041~1111)と同時代に生きており、その思想を明らかにする意義は大きい。本研究では、これらに加え、永観が参照した天台本覚思想文献の『心性罪福因縁集』の思想内容と註釈についての研究を開始する。 平成29年度は、以下の事業を実施した。(1)菅原文時門下と永観作品への訳註作成:『本朝文粋』所載の菅原文時作品、及び前回科研費で積み残した慶滋保胤・大江匡衡・紀斉名らの詩序・願文の、詳細な訳註作成を継続して行った。永観『往生拾因』と『心性罪福因縁集』は、大学院生とともに出典調査・訳註を行った。(2)論文の作成:「文殊菩薩の化現―聖徳太子伝片岡山飢人譚変容の背景―」を公刊した。(3)研究成果の発表・講演:国内2回、海外7回の学会・シンポジウムで、研究成果の発表・招待講演・基調講演などを行った。(4)実地調査・写本調査:中国浙江省湖州師範学院・同甘粛省敦煌研究院とその周辺の実地調査を行い、講演を行った。また名古屋市真福寺大須文庫において写本調査を行った。(5)『心性罪福因縁集』の研究:該書の影印・翻刻・解題が、『中世禅籍叢刊』第12巻「稀覯禅籍集 続」(臨川書店)に収載され公刊された。本研究課題の大きな目標の一つが達成され、研究が進展するであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
菅原文時門下の詩序・願文、永観『往生拾因』・『心性罪福因縁集』に対する、詳細な出典調査と訳註を継続して行った。これらについては、依拠テキストの諸本を調査し、校本を作成するとともに、データベース・類書・索引・辞書などを駆使して、出典の検討を行っている。この作業が最も重要で、新たな発見に繋がるものでもあるため、一字一句に対して、慎重かつ精確な訳註を作成することを目指している。これらには多大な時間を要するため、訳註はまだ公刊していない。 『心性罪福因縁集』については、『中世禅籍叢刊』第12巻で公刊したことにより、一つの目的を果たすことができた。国内・国際会議や講演における研究成果の公開と、一般への周知は、計画以上に行うことができた。論文数が少ないため、最終年度に数本を執筆したい。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)平成30年度は最終年度となるため、研究成果の公開を意識して、単行書・論文刊行を重視しつつ、註釈のスピードを速めたい。 (2)国内外の学会・シンポジウム・講演会において積極的に研究成果を公開し、また論文を執筆することで、多くの研究者・学生・一般に広める努力をしたい。 (3)最終年度のまとめとして、以下の国際シンポジウムを、他機関と共同で開催し、中国・韓国・アメリカなどから研究者を招く予定。 タイトル:国際シンポジウム「東アジア文化交流―呉越・高麗と平安文化―」/ 主催:本科研費・早稲田大学総合人文科学研究センター「グローバル化社会における多元文化学の構築」・早稲田大学日本宗教文化研究所・早稲田大学日本古典籍研究所・浙江工商大学東亜研究院・蔚山大学校日本語日本学科。共催:早稲田大学多元文化学会・同文化構想学部多元文化論系。後援:早稲田大学総合研究機構。/日時:平成30年12月8日(土)~ 9日(日)/場所:早稲田大学小野講堂/早稲田大学文学学術院第一会議室
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