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2017 Fiscal Year Research-status Report

ユリアヌスを中心とするペラギウス派第2世代の神学に関する思想史的・実証的総合研究

Research Project

Project/Area Number 15K02088
Research InstitutionNanzan University

Principal Investigator

山田 望  南山大学, 総合政策学部, 教授 (70279967)

Project Period (FY) 2015-04-01 – 2019-03-31
Keywordsアウグスティヌス / エクラヌムのユリアヌス / ペラギウス派 / ユリアヌス駁論ー未刊の書 / 原罪論 / 性欲
Outline of Annual Research Achievements

ペラギウス派第2世代の中でも、とりわけペラギウスの弟子として最晩年のアウグスティヌスとの間で激しい論争を行ったエクラヌムのユリアヌスが、アウグスティヌスの原罪論の、特に何を問題とし自らの独自の論陣を張ったのかについて研究を行った。ユリアヌスとの論争の書であり、アウグスティヌスの遺作とも言える『ユリアヌス駁論ー未刊の書(Opus Imperfectum)』は、5世紀初めに執筆された後、20世紀後半に至るまで、その内容の問題性から現代語に翻訳されてこなかった。本書の内容で特に問題視されたのは、アウグスティヌスが自ら提唱した原罪論を性欲と結びつけ、性欲に対してきわめてネガティブな評価しか下さず、ひいては、キリストは性欲を持たなかったとの見解を主張した点である。他方、その点を激しく批判したユリアヌスは、全く逆に、キリストの人性は人間の人性と変わらぬ性欲を宿していたこと、そうでなければ、キリストは決して性欲を制御し、人類のあるべき模範とはなり得なかったであろう、と主張した。ユリアヌスの主張の一貫性、妥当性に比べれば、アウグスティヌスの性欲に関する評価や立場はきわめてネガティブなものであり、とりわけ、キリスト者の夫婦の場合は、受洗後も性欲は残るがキリスト者であることによりその罪は不問に付されるが、しかし異教徒の夫婦の場合には性欲は依然として悪質な情緒として残り、罪のままに留まる、と主張した点は、アウグスティヌスの際どい性欲解釈と言わざるを得ない。本年度は、ユリアヌスの性欲観とアウグスティヌスのそれとの比較検証に焦点を当て、そこからキリスト論、教会論、さらには古代末期の教会が抱える派閥闘争にまで言及することで、ミクロレベルからマクロレベルまで貫く形で、当時のローマ教会ならびに北アフリカの教会が置かれていた問題状況を浮き彫りにした。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

ペラギウス派第2世代の思想家の中でも、とりわけエクラヌムのユリアヌスに関して集中的に研究を行い、かつ、国際学会での発表や国内でのゲスト・スピーカーとしての発表を行った。まず、7月27日~30日にかけてアメリカ合衆国シアトルのシアトル大学神学部において行われたBridgefolk Conferenceにて研究発表を行い、質疑応答も含めてきわめて有意義な成果を得ることができた。続いて、9月22日~25日にかけてオーストラリアのメルボルンにあるオーストラリア・カトリック大学にて開催されたAPECSS(Asia-Pacific Early Christian Studies Society)においてエクラヌムのユリアヌスに関する最新の研究成果を英語で発表し、この発表も質疑応答も含めて極めて高く評価された。本発表の内容は、APECSSがBRILL出版社から出版している国際ジャーナルSCRINIUMの第14号(2018年刊行)に掲載が決定し、現在既にゲラが出て最終編集段階に入っている。さらに、11月11日~12日に岡山大学で開催された中世哲学会にて、「原罪論」をテーマとするシンポジウムが開催され、本申請者は、シンポジストの一人としてアウグスティヌスの原罪論に関するユリアヌスの批判の論点について発表を行い、極めて高い評価を得た。本発表の内容は、2018年11月刊行予定の『中世思想研究』に掲載される予定である。以上の研究成果が陽の目を見ることとなった点からも、本科研は概ね順調に進展していると評価できる。

Strategy for Future Research Activity

次年度は、本科研の最終年度となるため、これまで行ってきたペラギウス派第2世代に関する研究の全体を纏め上げる年度となる。ペラギウス派の中心人物と黙されるペラギウスはじめ、その弟子であったカエレスティウスやエクラヌムのユリアヌス、また、逆にペラギウスに大きな影響を与えたとされるアクイレイアのルフィーヌスやアクイレイアのクロマティウスらの研究を総合的に評価し、それら第2世代の思想全体がアウグスティヌスをはじめとする北アフリカの神学とどのように決定的に異なっていたのか、ペラギウス派排斥の決定的要因とは何であったか、について最終的な結論を纏め上げるところまでが、今後の研究推進の課題となる。同時に、文献学的研究のみならず、北イタリアや南のナポリ、ノラ、さらには北アフリカにおける洗礼堂の実地調査の成果も踏まえて、ペラギウス派第2世代に関する総合的な研究の総括的まとめを行い、論文に纏めると同時にその成果を権威ある学会にて発表することを予定している。具体的には、本年9月13日~15日に岡山大学にて開催されるAPECSS国際学会にて、そのペラギウス派に関する最新の研究成果を発表する予定である。これにより、さらにペラギウス派に関する研究を次のステップへと展開させていきたいと考えている。

Causes of Carryover

研究遂行上、データ入力作業のための謝金を計上していたが、今年度は海外での2つの研究発表や、国内での学会シンポジウムのシンポジストを担当するなど、研究成果発表のために時間が大きく取られてしまい、データ入力作業に必要な人材を雇用して謝金を支払う時間を確保することができず、次年度使用額が僅かではあるが発生することとなった。次年度については、予定している費目にて、予算を全て消化できるよう努力する予定である。

  • Research Products

    (4 results)

All 2017

All Journal Article (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results,  Peer Reviewed: 1 results) Presentation (3 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results,  Invited: 1 results)

  • [Journal Article] Pelagius’ Narrative Techniques, their Rhetorical Influences and Negative Responses from Opponents Concerning the Acts of the Synod of Diospolis2017

    • Author(s)
      Nozomu Yamada
    • Journal Title

      Studia Patristica, Peeters.

      Volume: 98 Pages: pp.451-462

    • Peer Reviewed / Int'l Joint Research
  • [Presentation] Presentation for my research2017

    • Author(s)
      Nozomu Yamada
    • Organizer
      Bridgefolk Conference
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] Political and Ecclesiastical Perspectives of Augustine’s and Julian of Eclanum’s Theological Response in the Pelagian Controversy2017

    • Author(s)
      Nozomu Yamada
    • Organizer
      Asia-Pacific Early Christian Studies Society 11th Annual Conference ,APECSS
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] ペラギウス派による原罪論批判の本質と課題 ――悪は「善の欠如」であるか?――2017

    • Author(s)
      山田 望
    • Organizer
      中世哲学会 第66回大会 , 中世哲学会
    • Invited

URL: 

Published: 2018-12-17  

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