2018 Fiscal Year Annual Research Report
Historical, Empirical and Synthetic Studies on the Theology of the 2nd Generation of Pelagians represented by Julian of Eclanum
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15K02088
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
山田 望 南山大学, 総合政策学部, 教授 (70279967)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エクラヌムのユリアヌス / アウグスティヌス / 未完の書(Opus Imperfectum) / 原罪論 / 女性 / 女性の尊厳 / 自由意志 / 神化思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、ペラギウス派第2世代に属するエクラヌムのユリアヌスとアウグスティヌス最晩年の論争の書であった『未完の書(opus Imperfectum)』等を取り上げながら、今年度は、第2世代が第1世代のペラギウスから、とりわけ女性や女性性に関して、どのような見解を受け継ぎ、いかなる女性観を展開させていたかとの課題を基に研究を進め、同時に、今回の科研研究全体を締め括る総纏めの作業を行なった。『未完の書』で展開されたユリアヌスによる女性性、特にアウグスティヌスの原罪論に対する批判的見解を取り上げながら、合わせて、カエレスティウスやペラギウス派第2世代の手になるものとされる女性宛ての書簡群の内容を研究対象として、自由意志や自然本性、女性の意志の喚起や女性の尊厳についてペラギウスの見解が第2世代にどのように継承されているか、また、それにより、アウグスティヌスの見解とどのように相違をきたし、排斥されるに至ったかについて研究を進めた。研究の過程で、ペラギウス派から女性信徒に対して施された東方型神化思想による教育内容は決して異端的見解等ではなかったことを示すべく、東方アンティオキア伝承に属するクリュソストモスが女性助祭に宛てた書簡内容との比較を試み、これによりペラギウス派は東方型の女性信徒に対する教育的勧告やアスケーシスの実践とほぼ同等の内容を施していたことが明らかとなった。 さらに、後代、ペラギウス主義として批判の対象となった、カエレスティウスによる「恩恵無しに人は救いに到達できる」との発言の真意に関する教会政治学的考察を行った。さらに、アクイレイアのルフィーヌス、クロマティウス、ユリアヌスに共通する、教師としてのキリスト理解や成人洗礼の強調が、当時のモザイク画など古代末期の考古学データによっても、ひとつの神学的傾向として伺えることについて、仮説レベルに留まったが、検証を試みた。
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