2016 Fiscal Year Research-status Report
1920-1950年代京都における公共空間の思想史的研究
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15K02090
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Research Institution | Osaka University of Commerce |
Principal Investigator |
長妻 三佐雄 大阪商業大学, 総合経営学部, 教授 (80399047)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 公共空間 / 地域社会 / 京都 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度に研究した深田康算における「感情移入」や「模倣」の問題ををふまえながら、平成28年度は、以下の二つの点を中心に研究した。一つは深田をはじめとする京都学派が戦後の京都の公共空間に与えた影響についてである。深田の周辺には美学や芸術に関心をもつ若手の研究者多く存在しており、「模倣」や「機能美」についての彼らの問題意識や論考が幅広い影響を与えた。専門的な分野での影響に加えて、分野を越え、文学や哲学にも新しい問題を提起した。雑誌『美・批評』の目次や主要な論文を調査して、深田の美学がどのような影響を残したのかを検討した。中井正一や雑誌『美・批評』に関する先行研究は存在しており、それらの先行研究についても検討を行った。 もう一つは、深田だけではなく、下村寅太郎や田中美知太郎など、京都の知識人の文献を分析して、京都学派とその周辺の言論空間を明らかにする研究である。下村にしても、田中にしても、戦後も精力的に執筆活動を行い、京都の言論空間にも重要な影響を及ぼした。決して画一的はなく、多様な言説を有していた公共空間を知るうえでも、雑誌『美・批評』グループ以外の思想についても目配りすることが必要だと考えた。学界やジャーナリズムでの中心的な議題、京都という地域社会での主要な言説や媒体など、当時の思想的背景や文脈をできるかぎり明らかにして、その中でそれぞれの思想を位置付けていくための基礎的な研究を行った。平成28年度収集した資料もそれに関連するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度に深田康算の美学や哲学を研究するのに時間がかかったことが影響している。また、平成28年度、京都学派の周辺についての研究を進めたが、公共空間を分析するうえで、予定していたよりも幅広く資料を調べ、文脈や背景を調査することが必要になったため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、戦後の京都の公共空間について分析したい。雑誌『美・批評』に集った人びと、さらにその思想的な影響を検討するとともに、それとは異なる文脈や系譜にも注目して研究を進めたい。とくに、1940年代から1950年代にかけての京都の言論空間を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
平成28年度は研究を進めるうえで新たな文献の分析が必要になったため、資料調査に行くことができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は収集した資料や文献の分析を行うとともに、市立竹原書院図書館を中心に深田門下の中井正一についての資料を調査する。そのための旅費を使用する計画である。それとともに、地域の公共空間を分析するために必要な文献・資料を購入する計画である。
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Research Products
(1 results)