2017 Fiscal Year Annual Research Report
Verification of aesthetic relevance of fictional theory in music and literature.
Project/Area Number |
15K02103
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小野 貴史 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (10362089)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 亮介 東洋大学, 文学部, 教授 (00339649)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 虚構理論 / 音楽美学 / ゼロ年代 / ポストモダン / 身体性 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究最終年度であるH29年度はテクノロジー文化と音楽の消費構造の変遷データを詳細に分析し、ゼロ年代と比較して、音楽消費サイドがネットでヴァーチャルに音楽を享受するよりも、リアルに音楽が演奏される《場》を求めるようになったことを論じた。とりわけポストモダン文化を読み解き、それが脆弱な論理的基盤の上に成り立っていたことを指摘した。ポストモダンの概念は芸術世界に適用された場合,芸術の自律性さらに創作サイドのメタ物語性が全て棄却される。この論理的脆弱性が後にゼロ年代における,個々の作品としては単純でありながらも混然とした音楽文化状況を招いてしまう結果につながったという結論に達した。しかし、ポストモダンの終着点たるゼロ年代が終わると、無重力/無個性化されたポストモダン的消費音楽は廃れ,前時代的な,ある種の自己主張の《強烈さ》を表出するフィクション世界(=芸術)が再び求められる時代に突入した。何重にも仕掛けられたフィクションの愉楽から、リアリティを持つ“声”と“身体性”を再び希求するようになっているという結論に至った。 また、ジョナサン・スターン『聞こえてくる過去 音響再生産の文化的起源』(中川ほか訳、インスクリプト、2015)を中心に、音響再生産技術と音響メディアの関係、その組織化をめぐる考察も行った。 さらに、“Duo V” for Flute and Tenor Saxophone (Ensemble sans-limite 2017定期公演)、“Israeli's Type ε” for Steel guitar, Percussion and Piano (Ensemble sans-limite 2017定期公演)等、本研究を実作の面で社会的にアウトリーチする活動も行った。
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