2019 Fiscal Year Research-status Report
近代的演奏会の成立と変遷からみる音楽文化のグローバル化:欧州諸都市の比較研究
Project/Area Number |
15K02107
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
小石 かつら 関西学院大学, 文学部, 准教授 (00636780)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | メンデルスゾーン / 演奏会用序曲 / 交響曲 / オーケストラ / 演奏会 / ライプツィヒ / ピアノ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「演奏会」に注目することで、多面的な音楽ジャンルの相互連関を明らかにすることを第一の目的としている。演奏会に注目するのは、従来、音楽学が「作品」に注目してその実態を解明してきた歴史を踏まえ、作品が音として鳴り響く「場」に光をあてることにより、一回の演奏会で演奏されるジャンルを超えた作品群として、音楽を捉えることができるためである。本研究では、その結果を、ヨーロッパ諸都市における状況と比較することで、音楽文化のグローバル化の実態を解明することを目的としている。 具体的には、ヨーロッパで最も歴史の長い民間オーケストラであるドイツのライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の創立(1781年)以来のプログラムの変遷をたどることを研究の主軸としている。 このゲヴァントハウス管弦楽団を世界の規範となるようにしたのは、第5代指揮者であったF. メンデルスゾーンであった。その演奏会の中で、オペラ公演の中から序曲だけを取り上げて演奏することが好まれた。これに合わせてメンデルスゾーンが創出したのが、オペラを持たない、演奏会のためだけに独立した「演奏会用序曲」であるが、本年度は、この演奏会用序曲が、演奏会のためとしてではなく、家庭でピアノ連弾で演奏されるために作曲された側面をもつことを、作品改訂の跡から明らかにした。 さらに、この演奏会用序曲の楽曲が、緩、急から成る2部分で構成されている点に着目し、このオーケストラ作品の楽曲構成が、メンデルスゾーンが作曲を学習し始めた少年時代の習作群にも、その萌芽が見られること、そしてそれが、演奏会用序曲が多数作曲される時期に、ピアノ作品として、傑作と呼ばれる作品として結実したことを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヨーロッパの各劇場が、インターネットで資料公開をはじめており、それに合わせて、出張計画を変更したが(パリ、ミュンヘン、ウィーン、ロンドン)、ヨーロッパ諸都市の比較研究という主軸に変更は無い。現在まで、パリ、ロンドンについてはインターネット上で公開されたデータベースを使用して調査を進めており、研究全体としてはおおむね順調に進展しているが、ロンドン、ミュンヘン、ベルリンおよびライプツィヒで調査をしたいと予定していた点について、冬期休暇のインフルエンザ流行、および年明けからの新型コロナウィルスの流行により、実現していない。これらについて、1年延長して完遂する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスに関連する事情により、2020年度も現地調査ができない場合を想定し、各劇場が公開しているデータベースを使用することによる研究にシフトできるよう、調整している。
|
Causes of Carryover |
研究遂行のための海外出張のためのまとまった時間が取り難くなり、欧州出張ができなかったため、次年度使用が生じた。 ロンドンおよびドイツ国内の劇場にて、演奏会プログラムの調査を実施すると共に、データベース活用により現地調査を補い、研究遂行することを計画している。
|
Research Products
(3 results)