2021 Fiscal Year Research-status Report
近代的演奏会の成立と変遷からみる音楽文化のグローバル化:欧州諸都市の比較研究
Project/Area Number |
15K02107
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
小石 かつら 関西学院大学, 文学部, 教授 (00636780)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | メンデルスゾーン / オーケストラ / 演奏会 / 交響曲 / 演奏会要序曲 / ライプツィヒ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「演奏会」に注目することで、多面的な音楽ジャンルの相互連関を明らかにすることを目的としている。演奏会に注目するのは、従来、音楽学が「作品」に注目してその実態を解明してきた歴史を踏まえ、作品が音として鳴り響く「場」に光をあてることにより、「一回の演奏会」で演奏される曲目(プログラム)として音楽をとらえることができるからである。これにより、作曲家やジャンルといった枠組みを超えた作品群、ないしは作品の組み合わせとして、音楽を俯瞰することが可能となる。 本研究では、その結果をヨーロッパ諸都市における状況と比較することで、音楽文化のグローバル化の実態を解明することを目的としている。具体的には、ヨーロッパで最も歴史の長い民間オーケストラであるドイツのライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の創立(1781年)以来のプログラムの変遷をたどることを研究の主軸としている。 本年度は、コロナ禍が続き、現地調査ができないことが予めわかっていたため、これまでに調査した資料を整理することに努めた。そしてそれらを、(1)ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のプログラムの変遷そのものの推移、(2)その変遷の中で最大の転換点を主導したメンデルスゾーンの仕事という2つの側面から整理した。(1)については、市民講座およびオンライン・セミナーで、文化的歴史的背景と共に一般公開し、(2)については、メンデルスゾーンの楽譜の翻訳出版という形で公開した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヨーロッパの各劇場の公演史について、少なくともライプツィヒの分についてだけでも現地で調査する計画であったが、コロナ禍によりまったく実施できなかった。これは、2年連続で同じことが続いた。2020年度はパリ、ロンドンについてインターネット上でデータベースの公開があったが、2021年度は、ライプツィヒでもデータの公開がなされた(但し、極めて使い勝手が悪い)。 これらのデータを使用することにより、研究全体としてはおおむね順調に進展しているが、現地での調査に勝るものはなく、さらに1年延長して機会をさぐりたいと願っている。 しかしながら2022年度は、現地調査を実施できるできないにかかわらず、これまでに収集した資料とインターネット上に公開されたデータを照合し、私が作成したデータを「使える状態」にまで完成させ、ひとつの成果として終結させるべく計画している。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスに関連する事情により、2022年度も現地調査ができないことが予測される。そのため、各劇場が公開しているデータベースを使用することによる研究に、完全にシフトする。 また、ゲヴァントハウス管弦楽団のプログラム変遷の変革期に中核的な役割を果たしたメンデルスゾーンについて、彼が演奏会で取り上げた作品や、自身の作品の傾向分析を研究に組み込む。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍のために、海外での調査研究が実施できなかったため、次年度使用額が生じた。現地調査が可能となった場合は旅費として、海外調査が難しい場合は、現地で公開されている資料を、コピーや取り寄せ等によって入手するための費用にあてる。また、それらを整理するための補助作業アルバイト謝金として使用する。
|
Research Products
(3 results)